広島のドラフト戦略のキーマンは3年目外野手⁉︎ 狙うは「右の大砲」か「将来のエース候補」か

  • 安倍昌彦●文 text by Abe Masahiko
  • photo by Ohtomo Yoshiyuki

チーム事情から見るドラフト戦略2021〜広島編

 今年の広島のドラフトのキーマンは、じつはチーム内にいる。

 そのキーマンとは、外野手の正随優弥(しょうずい・ゆうや)だ。2018年のドラフトで6位指名されて入団。昨年まで一軍出場はわずか7試合という3年目の新鋭である。

 正随については、亜細亜大の頃から「右の大砲候補」として熱く注目していた。神宮球場のレフト上段にプロでもめったに見ることのできないような特大アーチを目撃したことがあるし、右中間にグングン伸びていく打球はスラッガーと呼ぶにふさわしい当たりだった。

今年春のセンバツでも活躍した市和歌山のエース・小園健太今年春のセンバツでも活躍した市和歌山のエース・小園健太この記事に関連する写真を見る 打つだけではなく、二塁走者の本塁突入を阻止できる強肩も光っていたし、足だって遅くないのに、なぜ6位だったのか......?

 大学時代の正随は、長打を打ったあとの打席が粗かった。とりわけ、レフト方向に豪快に引っ張ったあとの打席は、バッティングを崩していたように見えた。そのあたりが「パワーはあるけど粗っぽい」という各球団の評価になったと聞いている。

 そんな正随が、この夏あたりから一気に才能を開花させた。8月下旬から9月にかけて、ファームでホームランを量産。一軍に昇格して9月15日の中日戦は、まずは5回にタイムリーを放つと、7回一死一、二塁の場面では逆転の3ラン。1試合4打点と存在感を見せつけた。

 この正随が広島打線の一角を占められるかによって、今年のドラフト戦略が大きく変わってくると見ている。

 広島にとって「右の大砲候補」の獲得は、昨年のドラフトでもテーマになっていたが、今年も早い段階から松田一宏オーナー代行の号令がかかったとの報道もあった。

 たしかに、左打者に偏ったチーム編成は早急にクリアしなければならない課題であり、なかでも鈴木誠也の後継者探しは重大なミッションである。

 その一方で、Bクラスに低迷している原因を探ると、チーム防御率3.94(リーグ5位/9月19日現在)の投手陣であることは明白だ。そうした現状を鑑みると、大砲候補ばかりも探していられない。まずは失点を減らすことが最優先ではないだろうか。

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