村上宗隆が史上最年少の100号達成。「こんな子がいたんだ」コーチ陣の言葉で振り返る成長の軌跡

  • 島村誠也●文 text by Shimamura Seiya
  • photo by Kyodo News

 この年の5月、そのことについて村上に聞くと、「僕は全然すごいと思ってないです」と淡々と語っていた。

「プロに入れば年齢は関係ないですし、野球をしているからにはレギュラーとして試合に出たい。弱音というか、練習が厳しいから(試合で)集中できないというのはないです」

 そしてこう続けた。

「(キャンプの時に)いまの姿を思い描いていたというよりは、僕はいつでも"できる"と信じてやっています。最初からダメだという気持ちはまったくないですし、とにかく1日を、目の前の試合を、目の前の1打席をしっかり集中してやっていこうと。いまは毎日野球のことばかり考えています」

 この年も10月のフェニックスリーグに参加。松元コーチ、北川コーチは、1年ぶりに再会した村上の姿に驚きを隠せなかった。

「外野フライかと思った打球がフェンスを越えていく。力強さが増しましたね。久しぶりに村上と話をしたのですが、青木(宣親)たちの打撃について『自分もその感覚がわかるようになってきました』と。自分のスタイルを大事にしながらも、取り入れるところは取り入れる。まだまだ伸びる選手だと、あらためて思いました」(北川コーチ)

「僕のなかでは3年目が終わってからすごい選手になるだろうという計算だったのですが、2年目にして36本塁打ですからね。想像以上に成長が早かったですね(笑)」(松元コーチ)

 だが村上は、驚異的な成長を遂げた2年目を「悔しい1年でした」と振り返った。

「喜びと悔しさを秤にかければ、悔しさのほうが大きいです。三振もエラーも多く、チームに迷惑をかけてしまった。そこに尽きます。今シーズンは終わったことなので、来年に向けて新たな気持ちでやるしかないと思っています」

 このフェニックスリーグでは、この年限りで現役を引退し、翌年から二軍打撃コーチとなる畠山和洋も合流した。

「約1年ぶりにグラウンドで見ましたが、ボールのとらえ方や飛距離はほかの若い選手と比べて数段上ですよね。おそらく今年は、常にホームランを意識して打席に立っていたと思います。来年、その気持ちを押し殺す打席が増えていけば三振は減るし、四球数は劇的に増えると思います。打席で我慢することの大事さを伝えられればと思っています」(畠山コーチ)

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