村上宗隆が史上最年少の100号達成。「こんな子がいたんだ」コーチ陣の言葉で振り返る成長の軌跡

  • 島村誠也●文 text by Shimamura Seiya
  • photo by Kyodo News

 この年の10月、村上はフェニックスリーグで10本塁打を放ち、リーグ新記録を樹立。それが終われば、休む間もなく"地獄"の秋季キャンプ(愛媛県松山市)に参加した。そこには宮本慎也コーチ(現・解説者)と石井琢朗コーチ(現・巨人野手総合コーチ)が待ち構えていた。

「ここからギアを上げることが進歩の差。力を抜くのは誰でもできる」

 力をふり絞りながらサンドバッグにバットを叩きつける練習をしている村上に、石井コーチからのゲキが飛ぶ。この練習後、石井コーチに村上について聞くと「4番しか考えられないですよ」と目を細めた。

「サンドバッグを叩く音に抜きん出たものを感じます。ファームでも結果を出していますし、誰もが『村上はすごい』と言ってくれる。僕としても将来の4番として育てなければいけないと思っています。

 でも僕から見ると、はたして今の状態で一軍のパワーピッチャーに通用するのかと聞かれれば、まだ『?』なんです。彼なりに試行錯誤しながらやっていますが、長い目で見た時にもっといいアプローチというか、考え方があるんじゃないかと。そこを探っているところです。そのうえで、ただ打つだけではなく、人間としての考え方や行動の部分もしっかり教えていければと思っています」

 この秋季キャンプでは宮本コーチとの1時間にわたる特守もあり、さらには台湾でのウインターリーグにも参加。野球漬けのまま、村上のプロ1年目は終了した。

 迎えた2年目のシーズン。

「まずは開幕一軍、次にレギュラーを目標にします」

 沖縄・浦添での春季キャンプ終盤、村上はそう語っていたが、見事に実現してみせた。開幕から先発出場を続け、結果的に全試合出場。36本塁打を放って、新人王にも輝いた。

 三振の多さ(184個)や打率の低さ(.231)、守備(失策15)など課題も多かったが、それよりも驚かされたのが体の頑丈さだった。シーズン中は、若手主体の早出練習でバットを振りこみ、それが終われば個別の守備練習をし、最後にチーム全体練習に参加。19歳の選手が、そのハードな練習を黙々とこなす姿に感動すら覚えた。

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