ヤクルトからの戦力外通告に「オレだったのか」。近藤一樹が独立リーグでNPB復帰より果たしたいこと (3ページ目)

  • 島村誠也●文・写真 text & photo by Shimamura Seiya

「理由はキャッチボールができていなかったからです。マウンドから投げるボールとキャッチボールはイコールです。選手たちはこのボロボロのキャッチボールで試合をしようとしているんだと。ただ僕は、キャッチボールができない=伸びしろと思っています。動き方、トレーニング、考え方など、これまで僕が経験してきたことを伝えるだけで伸びるんじゃないか。そういう意味で、伸びしろの塊のような集団でした」

 近藤は「選手たちの誰もがNPBを目指しています。それは覚悟があるということ」とコロナ禍のなか、厳しい練習を課している。

「限られた環境ですが、上の練習に近づけるようにやっています。うまくなるには練習を重ねるしかありません。そのなかで、うまくなったことを実感し、喜びが生まれます。練習には難しい動きも入れていて、それができない選手もいる。でも負けず嫌いな子が多く、できるまで頑張る。練習時間は長いですが、集中力を切らさずについてきてくれます」

 選手に対する目は優しく、親身になっていることが伝わってくる。

「本当に上で野球をしたいのであれば、今の練習ではまだまだ足りないです。僕がNPBで経験してきたことを考えれば、今の練習を軽くこなせる体力と出力がないと、上に行くことがゴールになってしまう。大事なのはNPBに行くことではなく、そこで結果を残すこと。そのことを選手たちには話しています」

 一方で選手としての近藤は、ここまで18試合に登板し、0勝1敗7セーブ(3ホールド)。15回2/3を投げて防御率2.89、奪三振23、与四球2と安定した数字を残している。
※成績は8月31日現在

 そして近藤は「上を目指す気持ちは変わらないですけど」と前置きし、こう語った。

「今はそれよりも、上を目指す選手たちの見本(サンプル)になれたらという思いが強いです。僕が投げているボールでも上には行けない。『NPBはそれくらい厳しい世界なんだよ』ということを感じてもらえたらと思っています。

 なにより、チームは試合をするごとに成長して、前期優勝を果たしました。9月にはチャンピオンシップが控えています。上に行けなかったとしても、チームに集中して最後まで全力で戦っていきたい。そしてみんなに勝つことの楽しさや喜びを味わってほしいと思っているんです」

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