2021.08.27

有名女優が恥をかいた「日本人初の大リーガー」マッシー村上の凱旋

  • 高橋安幸●文 text by Takahashi Yasuyuki

 思わぬところから、メジャーの話につながった。野球留学で渡米したマッシーさんだが、そもそも、留学できることが南海に入団する条件だったそうだ。当初から「アメリカで野球をやりたい」という願望があったのだろうか。

「あのね、そもそも俺、プロ野球、入る気なかった。大学行って、就職しようと思ってた。今の選手みたいに、プロに行くとか、メジャーリーガーになりたいとか、そんなのはひとっつもなかった。まあ、ノンプロでサラリーマンやってればいいかな、と。

 欲も、何もなかった。だから、あんまり成績がよくなかったんだろうな。もうちょっとその、欲があってね、性格が悪けりゃ、いい選手になれたんだと思うけど」

 目を丸くしてニカッと笑い、「性格が悪い......ですか?」と尋ねても答えず黙っている。プロ野球選手になる気もなく、欲もなかった、とすると、マッシーさんにとっては、アメリカに行けること自体がプロ入りの魅力だったのか。

「うん。契約のとき、言われてね。え? アメリカ? いいな、行ってみたいなあ、と。当時はまだ、普通の人はね、『いやあ、そんなもんはもう、言葉が違う、生活が違う、そりゃあ怖いや』となってるよ。でも俺は、いいなあ、と」

 かなりの度胸があったのだろう。もしも「普通の人」だったら、この時点で[日本人初の大リーガー]は誕生していなかったことになる。

「ただ、南海に入ったら1年目、ああ、ダメだこりゃ、行かしてくれないや、ってことになった。キャンプではよかったんだけど、3月の頭に一軍上がってね、肘壊しちゃった。だって、雪の中で『40分ピッチングやれ』って言うんだから。

 俺はもともとスリークォーターだったんだけど、『肘上げろ』と言われて。『そうりゃ〜、行け〜!』で投げたら、最後、耳元でピシッと音がして、壊れた。高校から入ったばかりでわかんないから、周りの言うとおりにするしかないじゃない? でも、それがまあ、かえって幸いしたかもわかんないけどね」