2021.08.24

プロ野球はコーチ育成が重要。西武黄金期を築いた根本陸夫は選手を育てること以上にこだわった

  • 高橋安幸●文 text by Takahashi Yasuyuki
  • photo by Sankei Visual

 チーム力も高まっての優勝だったが、日本シリーズでは阪神に2勝4敗で敗退。それから6日後の11月8日、広岡の監督辞任が唐突に発表された。表向きの理由は「健康上の問題」も、実際にはフロントとの確執が原因だと外部に知れ渡っていた。つまりは根本と広岡との確執であり、監督就任以来、広岡はトレードにも新人補強にもたびたび不満や疑問をぶつけていた。

 球団内部でぶつけるだけならまだよかったが、広岡はマスコミを利用して間接的に意見し、ある夕刊紙ではあからさまなフロント批判を展開。これが根本の目に留まり、広岡に問いただしたことから、急展開で辞任発表に至ったとされる。実質的には「解任」と言えるだろう。

 後任監督には、森が復帰して就任することになった。決定まで1カ月近く費やしたが、広岡の参謀役を務めた能力を根本は高く評価していた。参謀として有能な人材がトップに立った時、どんな変わり身があるのか、若干の不安はあった。現に西武グループ内からも「参謀として一流だが、森で勝てるのか」と危惧の声が出た。すると、監督就任発表時に根本は言った。

「西武の最初の3年間は土台づくり。次の4年間は戦いの時だった。来シーズンからは、勝ちながらチームを動かしていく時期に入る」

「チームを動かす」とは、選手を育て、組織を整備して、常勝軍団へ飛躍していくという意味。西武の内情を熟知し、V9巨人の正捕手時代から守りの司令塔だった森に、根本は期待した。コーチ陣は投手担当に八木沢荘六が復帰し、打撃担当に土井正博が二軍から昇格。そしてバッテリー担当に黒田が就任した。ただ、黒田には以前から希望があった。

「じつは僕、根本さんにお願していたんです。『急に兼任コーチになったんやから、来年から監督が代わるんやったら、二軍のコーチか、アメリカ留学の選手を引率するコーチにしてください』って。そしたら、『ダメ! おまえはずっと一軍におれ。そんな、二軍でせんでええから、今のままおれ。勉強せえ!』って」