2021.08.17

ラオウの覚醒はホンモノか。オリックス・杉本裕太郎が語る自らの変身とソフトバンク松田からの金言

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • photo by Koike Yoshihiro

 さらに、オールスターではこんなこともあった。

「ソフトバンクの松田(宣浩)さんってポイントを身体の前のほうに置いて打つタイプに見えていて、オールスターの時、松田さんに聞いたんです。そうしたら『オレは前で打ってるよ』って......僕もポイントが前でもホームランを打ってるタイプだったんですけど、調子が悪くなると打ちたいと思って身体がピッチャーのほうへ突っ込んでしまう。そうすると低めのボール球を振らされるので『引きつけて打たなくちゃ』と思っていました。でも、変化球をマークしすぎて引きつけようとしたら、今度は速い真っすぐに差し込まれて、それはそれでおかしくなったりするんですよね」

 突っ込んではいけないからと打つポイントを前のほう(ピッチャー寄り)ではなく、身体の近くまで引きつける。しかし引きつけすぎると速いストレートに差し込まれる。だから練習ではセンターから右方向へ打つ意識を持って、差し込まれてもヒットゾーンに詰まった打球を落とすというイメージをラオウは大事にしてきた。しかし松田はこう言ったのだという。

「松田さんは『曲がる前の変化球を泳ぎ気味に打って三遊間のヒットが理想』と言うんです。『調子が悪くなったら逆方向に打つ練習をするとタイミングが遅くなってもっとおかしくなっちゃうから、タイミングが合ってない時はレフトのポール際へ引っ張る練習をする』とも話して下さって......そう言われれば僕にもその感覚があって、ああ、そうか、悪い時にはあえて引っ張る練習をする調整方法もあるんだなと、すごく勉強になりました」

 突っ込んで打っても泳いで打っても、それが我慢したなかでのバッティングならヒットゾーンへ飛ぶ。だから引きつけて打つ、泳いではいけないと決める必要はない。

 実際、今シーズンのラオウは泳ぎながらでもホームランを打てることを証明している。6月29日のロッテ戦、2打席連続で打ったホームランの2本目となる今シーズンの17号は、二木が投じた低めのフォークボールを、泳ぎながらもセンターのバックスクリーンへ運んだ。ラオウにも技あり、の一発だった。