ラオウの覚醒はホンモノか。オリックス・杉本裕太郎が語る自らの変身とソフトバンク松田からの金言

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • photo by Koike Yoshihiro

「最初は『なんでなん?』と思うこともありました。でも一軍と二軍の入れ替えや起用は自分ではどうしようもできないことなので、そこを考えるのをやめようと思ったんです。自分ができることだけしようと決めました。プロに入るまでは試合に出るのは当たり前だったし、そういう苦労はしたことがなかった。

 でもプロに入ると、そうやって試合に出るのが当たり前だった人でも試合に出られなくなる。そういう先輩の中には、あきらめずにファームで頑張っている人もいたし、腐っている人もいた。そういう姿を見ていたら、僕はどっちなんや、頑張らなくてええんか、と思うようになったんです」

 そんな健気なラオウは"後半戦"の幕開け、親目線で心配するラオウ好きの杞憂を吹っ飛ばす豪快な一発を放った。

 8月13日、雨の降りしきる千葉で行なわれたロッテ戦。4番のラオウは初回、ツーベースヒットを放った吉田を二塁において、バッターボックスに入った。ロッテの先発は二木康太。初球、2球目と外角へのスライダーを見送って、カウントは1-1。3球目のアウトローへのストレートを見送ったあとの4球目、またも外へ。しかし今度はやや高く浮いた126キロのスライダーを、両腕がしっかり伸びたラオウの握るバットが捉えた。

 打球はセンターのバックスクリーンへ──ラオウが放った先制の19号2ランホームランは、宮城大弥の2ケタ勝利とオリックスの"後半戦"白星スタートを後押しする貴重な一打となった。

 そしてこのホームラン、今シーズンのロッテ戦でラオウが放った11本目のホームランだった。ラオウがこれほどまでにカモメを目の敵にする、何か特別な理由があるのだろうか。

「いやいや(笑)、ホンマにたまたまやと思います。オールスターの時、井口(資仁/ロッテ)監督、辻(発彦/西武)監督、工藤(公康/ソフトバンク)監督の3人が話をされていた時にたまたまそこを通りかかったらつかまって、『なぜそんな急に打てるようになったん?』って尋問されました(苦笑)。だから『ホームランを狙わないようにしています』って答えたら、(青山学院大学の先輩にあたる)井口監督に『そのわりにおまえ、ウチからメッチャ打つじゃねえか』って。(ロッテには)青学OBがたくさんいらっしゃるから、よっしゃ、いいとこ見せたろって思っているのかもしれませんね(笑)」

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