エースの200勝達成を目前にリリーフ失敗。ヤクルトの「サッシー」はプレッシャーに苦しんだ (3ページ目)

  • 長谷川晶一●取材・文 text by Hasegawa Shoichi
  • photo by Sankei Visual

【"怪物"とは無縁。島育ちの気さくな男】

――現役引退後は打撃投手、スカウトとして長年にわたってヤクルトに在籍していました。

八重樫 僕はバッティングコーチだったんで、(打撃投手だった時に)酒井には無理を言いました。ただ、故障のせいなのか、右バッターに対して抜けるボールが目立つようになってきた。それで、左バッター専用にしたんですよ。最終的には投げる意欲がなくなってきたのか、後にスカウトに転身することになったんです。

――スカウトとしては八重樫さんの先輩になりますね。

八重樫 僕がスカウトになった時に、小田義人スカウト部長に「ピッチャーについては誰がいい眼を持っているんですか?」と尋ねたら、「酒井だ」と返ってきました。スカウト時代、投手獲得の際には酒井の意見が重宝されていましたね。ライアン(小川泰弘)や松岡(健一)の獲得にも関わっていましたし。

――酒井さんは2019(令和元)年にヤクルトを定年退職されました。あらためて、酒井さんはどんな方でしたか?

八重樫 入団時には「サッシー」として、世間の注目を浴びて鳴り物入りで入団してきたけど、当の本人はまったくスター気取りしない、素朴な男でした。島育ちだからなのか、周りの影響を受けない、マイペースな男でしたよ。プロ3年目の顔面直撃さえなければ、また違った野球人生だったのかもしれないけど、惜しかったですね。ただ、最近どこで何をしているのかわからないんだけど(笑)。アイツ、元気かな?

(第79回につづく)

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