侍ジャパン・岩崎優のすごさを大学時の恩師が解説。決して速くない直球が打たれないワケ (3ページ目)

  • 安倍昌彦●文 text by Abe Masahiko
  • photo by Kyodo News

 確固たる根拠はなかったが、永田監督はそう感じていたという。

「マウンドに上がればポーカーフェイス。普段もそんな感じで、シャイで、マイペース。投げる前の日にはひとりでグラウンドの周りを散歩していて、『どうしたんだ?』って聞いても、ボソッと『気分転換です』としか言わない。人によっては無愛想と思われるかもしれませんが、それがあいつなんです」

 そんな人柄はプロ野球選手になっても変わらないと、永田監督は語る。

「人気チームの中継ぎの切り札ですから、チヤホヤされることもあるんでしょうけど、学生の頃とまったく変わらないです。オフになるとグラウンドに来てくれて......こっちが激励の言葉をかけても『ありがとうございます』とか『よろしくお願いします』とか、単語が返ってくるだけで大きなことは言わない。地味だけど、浮ついたところもなく、地に足がついている感じがします。彼のピッチングそのままって思いますね」

 永田監督は岩崎に対して、こんな思いを抱いている。

「気のせいかもしれないけど、今年の岩崎を見ていて、ボール1個分ぐらいゾーンが高くなってないかなって......そこだけが心配なんです。この4年間で200試合以上投げて、そのほかにもブルペンで投げているでしょ。実際に投げている球数はすごいはずです。蓄積疲労でなければいいんだけど......」

 まさに、育ての親ならではの視点。そして最後にこうエールを送る。

「自分から弱音を吐くようなヤツじゃないし、壁にぶち当たっても自分で乗り越え、次の目標に向かっていける強さはあると思います。そういう意味でも、今回のオリンピックという機会を大きなチャンスにしてほしいですね」

 コツコツと地道にグレードアップしてきた左腕が、30歳の節目を迎えた今、新たな関門に挑もうとしている。

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