川崎憲次郎が今季バケたセの投手4人を診断。阪神の変則右腕は「球質が汚い」

  • 中島大輔●取材・文 text by Nakajima Daisuke
  • photo by Jiji Photo

 キレは感覚的な表現で、「初速と終速の差が少ない」、「打者の手元で伸びる」、近年では「ホップ成分が平均的な投手より多い」などと説明される。実際に柳は、自身のストレートはホップ成分が多いと明かしていた。

 では、キレのあるストレートを投げられることは、速い球を武器にするのと同様に"才能"なのだろうか。

「結論から言えばそうですけど、それを言ったら終わっちゃいます」

 川崎氏はそう笑うと、実例を挙げて説明してくれた。

「たとえば上原浩治(元巨人)は140キロ強、山本昌さん(元中日)は130キロ台でも速く感じます。現役ならソフトバンクの和田毅、DeNAの今永昇太、楽天の早川隆久。フォームがゆったりで、腕の振りがめちゃくちゃ速い。体重移動をする時に、絶対開かない。

 それができるのは、基本的に足の使い方なんです。軸足の使い方と、そこからの体重移動がやたらうまい。そういうピッチャーがキレのあるボールを投げています」

 そうしたひとりが、2018年ドラフト1位で八戸学院大学から巨人に入団した髙橋優貴だ。昨年は左ひじ痛で出遅れて1勝に終わったが、今年は15試合で9勝3敗。7月11日の阪神戦では、普段140キロ台中盤のストレートが140キロほどしか出ないなか、相手エースの西勇輝に投げ勝った。

「髙橋を見た時、内海哲也(元巨人、現西武)に似ているなって思いました」

 川崎氏がそう話すのは、同じサウスポーとして共通点があるからだ。ともにストレートが特段速いわけではないが、キレのある速球で右打者の内角を果敢に突き、外角に逃げるスクリューを活かしていく。髙橋は今季こうしたスタイルに行き着いたからこそ、結果も伴ってきたと川崎氏は見ている。

「去年まではスクリューに頼りすぎているように感じました。たしかにあのスクリューは結構エグいけど、それだけでは通用しないのがプロ。大学時代に(最速152キロと)速かったストレートの質を上げてきたからこそ、スクリューが生きるようになりました。どういう組み立てをすれば勝てるか、本人もわかってきたと思います」

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