阪神・西純矢が語る「佐々木朗希ショック」から初先発初勝利まで。"現実"を味わう日々にも「大丈夫」

  • 菊地高弘●取材・文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Kyodo News

 ただし、西は佐々木の前で兜を脱いで全面降伏したわけではなかった。西が続ける。

「自分は佐々木の後に同じ打者と対戦することが決まっていたので、『真っすぐでは押せないからどう投げようか?』と考えたんです。そこで『変化球主体で攻めよう』と決めたのがよかったんでしょうね。緊張も解けて、いいピッチングができました。自分もどうにかして日本代表に入りたかったですし、貴重なアピールの場だったので」

 佐々木は佐々木、自分は自分。でも、同じマウンドに立てば負けたくない。そして、野球はすごい球を投げられる投手が勝つと決まっているわけではないーー。

 西の根底には、強烈な克己心が詰まっている。西は「人のことばかり見て、自分のことが疎かになってはダメなので」と語った。

 このような西の人格が形作られたのは、幼少期からの環境が大きかったに違いない。父・雅和さんは息子の野球を全力でサポートしてきたという。雅和さんから常に言われてきたこととして、西は「謙虚さ」を挙げた。

「父は野球経験者ではなく、技術的なアドバイスをもらった記憶はあまりないんです。だから『どういう時でも謙虚にいなさい』という言葉は自分のなかで一番残っていて、実際に今でも持ち続けているつもりです」

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