ヤクルト17年目で初のゴールデングラブ。角富士夫はどれだけ新外国人が加入しても腐らなかった (2ページ目)

  • 長谷川晶一●取材・文 text by Hasegawa Shoichi
  • photo by Kyodo News

【ほぼ満点のサード守備に対する唯一の不満】

――角さんの入団直後のヤクルト内野陣は、この連載でも触れた、大ベテランの大杉勝男さん、船田和英さん、前回の水谷新太郎さんがいました。内野手に転向したばかりの入団当時の角さんの守備はどういう印象でしたか?

八重樫 当時のヤクルトの内野手の中で比較しても、送球の安定性という部分では角は何も問題はなかったです。船田さん、水谷、角の3人の中では角の送球がいちばん安定していたと思いますね。極端に肩が強いわけではないけど、送球に関しては安心して見ていられました。グラブの使い方が柔らかかったし、バッティングと一緒で、ボールを捕球するポイントがいいんでしょうね。

――バッティングに関しても、守備に関しても、「勘がいい」「センスがいい」というイメージですか?

八重樫 器用なタイプには見えないけど、センスのよさは感じました。ただ、1980年代に入って角がサードのレギュラーになって、僕も正捕手になっていた時に、一度注意したことがあるんですよ。

――どんな注意ですか?

八重樫 余裕のあるゴロの場合、捕球してから数歩ステップを踏んでギリギリのタイミングで一塁に投げるんです。送球は正確だから、打者走者はアウトにはなるけど、いつも間一髪のタイミング。キャッチャーとしては、いつもハラハラするんですよ。そこで角に、「もう少し早く投げられないのか」って聞いたら、「いえ、僕はこのタイミングがいいんです」と言うんですよね。それだけ送球には自信があったんでしょうけど。

――言われてみれば、確かにそうだった気がしてきました。サードゴロを捕ってから、一塁方向にツーステップぐらい進んでから、勢いのある送球をしていましたね。もちろん、ダブルプレーの時には俊敏に送球していましたが。

八重樫 そうそう、ゲッツーの時はすばやく二塁にいい送球をするんですよ。だから、「ゲッツーの時のように投げられないのか?」とも言ったこともあります。でも、その時も「いえ、僕はこのタイミングがいいんです」って、拒絶されたよ(笑)。

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