「オレが23年かけてできなかったことを...」。門田博光は阪神・佐藤輝明に嫉妬した (2ページ目)

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro
  • photo by Sankei Visual

 これまでにもT−岡田(オリックス)や中田翔(日本ハム)、岡本和真(巨人)、清宮幸太郎(日本ハム)、そして大谷翔平(日本ハム→エンゼルス)といった長距離砲に格別の関心を持ち、彼らについての感想を熱く語ってくることがあった。今年はそこに佐藤が加わったというわけだ。

 4月序盤、佐藤が横浜スタジアムの場外に本塁打を放った時にはこんな話をしていた。門田は「飛ばせる力があることはわかっとる」と前置きしたうえで、「オレが知りたいのは、この子がホームランに対してどういう哲学を持っているかということや」と。つまり、柵を越えればいいと思っているのか、それともプロの打球にこだわり、どこまでも飛ばしたいと考えているのかということだ。

 ちなみに門田は、プロの打球、プロの飛距離に徹底してこだわった"ホームランアーチスト"だった。

「お客さんから自然発生的に声が上がるってわかるか? 『これがプロの打球か』『さすがプロや......』っていう、あの一瞬の空気を味わいたいために、アホみたいに毎日バットを振っとったようなもんや。オレがいつもイメージしていたのは、放物線やなしに低く遠くという打球。ライナーでスタンドに飛び込んで、椅子を下から突き上げて破壊するような当たりをいつも求めていたんや」

 さらには、全球場で場外ホームランを真剣に目指していたこともあったという。

「おかげで歳をとって飛距離が落ちても、まだフェンスの向こうに30本ぐらいは打てとったからな。ごまかしのホームランやから、オレ自身はカッコ悪くて、下向いてベースを回っとったけどな」

 交流戦が始まる前にも、佐藤に関する興味深い話を聞いたことがあった。この頃の佐藤は、ヒットは出ていたがホームランのペースは明らかにダウンしていた。当然、相手チームによる研究も進み、なにより疲れが出始める頃でもあった。

 しかし、門田はそうしたことはまったく別の理由から、佐藤のバッティングの変化について語ってきた。門田が指摘したのは、守備との関連性だった。

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