「ライフルマン」船田和英はいつもカッコよかった。それを実現させていた試合前のある習慣

  • 長谷川晶一●取材・文 text by Hasegawa Shoichi
  • photo by Kyodo News

――あらためて見ても似ていましたか?

八重樫 よく似ていましたよ。あれはいつだったか忘れたけど、ある年のユマキャンプで、船田さんがカウボーイハットをかぶって写真を撮ったことがあるんです。それもよく似ていました。たぶん、周りから「ライフルマンのマネをしてみろ」って言われたんじゃないのかな(笑)。

――先輩選手として、指導者としての船田さんの印象はいかがですか?

八重樫 僕には大杉さん、若松さんと尊敬すべき先輩がいます。船田さんは、大杉さんとも、若松さんとも違うタイプの先輩でしたね。とにかく気さくなんですよ。先輩なのに、偉ぶらないから、こちらとしても接しやすい。だから、指導者時代にはこちらからアドバイスを求めたりしましたから。内面では厳しい部分もあったのに、僕らの前では一切、そういう部分は出さなかった。

――僕は当時、子供でしたけど、体型もスラッとしていて、ユニフォーム姿がとてもカッコよかった印象が強く残っています。

八重樫 ユニフォーム姿は本当にカッコよかったですよね。そもそも、船田さんは身なりにとても気を使う人だったんです。試合前にユニフォームを着るじゃないですか。そうすると必ず、鏡に自分の全身を映すんですよ。そして、後ろ姿も「大丈夫かな?」って確認していましたから。それは指導者になってからも変わらなかったですね。

――だから、子ども心にも「ユニフォーム姿がカッコいいな」って思えたんですね。

八重樫 船田さんと同じタイプだったのは水谷(新太郎)もそうでしたね。水谷も、現役時代はもちろん、コーチになってからも、試合前には丹念に自分の姿を鏡でチェックしていました。それはやっぱり、船田さんの影響を受けていると思います。

――確かに、水谷さんもユニフォーム姿がカッコよかったですからね。体型がスリムだからということもあるけど、きちんと確認も怠っていなかったんですね。

八重樫 そうそう。いつも鏡の前で入念に確認している姿が印象に残っていますよ。船田さんの場合は、突然僕たちの前から姿を消してしまったから、30年近くが経った今でも「死」を受け入れられていない部分もあるんですよ。本当にお世話になりました。いい先輩でしたね......。

(第71回につづく)

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