守備力で選ぶ「歴代捕手ベスト10」。大矢明彦が「私など足元にも及ばない」と評価したNo.1は? (2ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Sankei Visual

7位 有田修三(1973~1991年/元近鉄ほか)

 近鉄時代は梨田と併用され、1979~1980年のリーグ連覇に貢献しました。しゃがんで構えたシルエットだけで有田だとわかるような、安心感のある捕手でした。

 リード面は安全というより、攻めた配球ができました。打者の特徴をよく研究して、一発勝負で思い切りのいいリードができる。

 1986年の巨人移籍後はそのエッセンスを持ち込み、新風を吹かせました。巨人の投手陣にとっても有田の思考は新鮮だったはずで、いい相乗効果が見られました。

6位 中尾孝義(1981~1993年/元中日ほか)

 スマートな体型で、足も速くて、肩が強い。従来の捕手像を覆した存在でした。それまでの捕手といえば、太っていて、鈍足で、怒られてもじっと我慢しているようなイメージ。それを中尾が一新してくれたような気がします。

 個人的に彼のプレーで好きだったのは、「パチン!」と気持ちのいい音を立ててキャッチングするところ。投手を乗せる、実にいい音なんです。

5位 達川光男(1978~1992年/元広島)

 同じリーグでしのぎを削った仲ですが、あの狭かった広島市民球場をホームグラウンドにして投手陣をリードするのは骨が折れただろうと思います。

 達川の特徴はよく言えば元気、悪く言えばやかましいとでも言いますか(笑)。それもまた、彼の個性でしょう。

 いつも投手を奮い立たせる、前向きにさせられる捕手でした。達川の声掛けをベンチから聞いていて、つい吹き出してしまうこともありました。

 広島市民球場でのヤクルト戦、ランナー二塁の場面で大杉勝男さんが打席に入ると、達川は投手にこう声を掛けました。

「バッター、石じゃけん。ストライク放らんでもええんよ」

 歩かせてもいいと伝えたかったのでしょうが、「石」と言われた大杉さんはカンカンに激怒しました。その打席でバットを引くふりをして、達川のマスクにガツンとぶつけていましたね(笑)。

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