話題のフレーミングが上手なキャッチャーは誰か。谷繁元信にその技術を聞いた (2ページ目)

  • 中島大輔●取材・文 text by Nakajima Daisuke
  • photo by Nikkan sports/AFLO

 では、捕手の立場からすると、「どっちでもいい」という球は存在するのだろうか。

「どっちでもいい、はないですね。ストライクはストライク、ボールはボール。僕はそういうタイプです」

 通算27年間の捕手生活で6度のゴールデングラブ賞に輝き、キャッチング技術に定評のあった谷繁元信氏はそう話す。ルール上、"枠"は定められているという考えだ。

「内心、たとえば球の4分の1がストライゾーンにカスって『ボール』と言われた時は、『おいおい、ストライクと言ってくれよ』と思います。でも、これはお互い様と言うか。日本でも捕球後にミットを動かすキャッチャーは多くいます。

 なぜ動かすかと言うと、ボール球を『ストライク』と言ってほしいから。動かした瞬間、『ボール』なんです。昔は僕も時々、動かすことをしていましたけど、基本はボールが来たところで止めて捕る。ストライクなのにボールと言われないキャッチングを心がけていました」

 ストライク、ボールのゾーンは初めから決まっている以上、捕手の力で「ボールをストライクにする」ことはできない。逆に、「ストライクをボールと言われないようにする」捕球法を谷繁氏は追求した。キャッチング技術の向上だ。

「低めでもミットをちゃんと止めればギリギリでストライクなのに、ちょっとだけミットが下がると球審にはボールが落ちたように見える。だから、『ボール』と判定されるかもしれない。

 それはキャッチングの問題なので、技術を高めるしかありません。捕球練習を繰り返して、自分がどこをどう意識して捕るのが一番いいかを考える。数を捕りながら、いろいろ試行錯誤するということです」

 アメリカ自治領プエルトリコは、ヤディアー・モリーナ(セントルイス・カージナルス)やイバン・ロドリゲス(元テキサス・レンジャーズ)らを生み出した"捕手大国"として知られる。ビクター・カラティーニ(サンディエゴ・パドレス)やクリスチャン・バスケス(ボストン・レッドソックス)の卒業校『プエルトリコ・ベースボール・アカデミー・アンド・ハイスクール』を筆者が訪れると、キャッチャーが捕球する際には「ひじから先をワイパーのように使いなさい」とベテランコーチに教えられた。

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