2021.06.09

ソフトバンクからの5位指名に嘉弥真新也は「なんで?」。自分のことより先輩投手のドラフト漏れに驚いた

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Kyodo News

 都市対抗を控えた9月14日、秋季神奈川県企業大会の東芝戦で、嘉弥真は先発投手に抜擢される。県内の強力なライバルを相手に、1安打完封と快投。その試合を見たソフトバンクスカウト(当時)の田口昌徳が、嘉弥真を高く評価したのだった。

 ドラフト会議2日前の10月25日に、JX−ENEOSは都市対抗初戦・王子製紙(現・王子)戦を迎えた。エース・大城が不調で4回途中に降板し、嘉弥真は2番手で登板。だが、勢いを止められずJX−ENEOSは初戦敗退に終わる。大舞台でアピールはできなかったものの、嘉弥真の記憶によると9球団からの調査書に記入したという。

 10月27日のドラフト会議当日、嘉弥真はソフトバンクから5位指名を受ける。最初に抱いた感想は「なんで?」だった。

「なんで僕が指名されて、大城さんは呼ばれないんだ?」

 有力候補だった大城は、指名漏れの憂き目に遭っていた。なぜ、大城がドラフトから漏れ、嘉弥真が指名されたのか。監督の大久保はこんな見方をしている。

「プロ側も左投手の需要は大きいのですが、大城の場合は大卒2年目ということもあって、あれ以上の伸びしろを見てもらえなかったのかもしれません。嘉弥真は高卒4年目と若く、少し変則的なフォームとコントロールがまとまっている点を評価してもらえたのかなと感じます」

 その後、大城はJX−ENEOSのエースとして社会人野球の歴史に名を残す存在になった。翌2012年の都市対抗と日本選手権、2013年の都市対抗と3季連続MVPに輝き、JX−ENEOSの黄金時代に大きく貢献した。大久保は「プロとはタイミングが合わなかったけど、彼が残ってくれたことですばらしい恩恵をもたらしてくれた」と大城の功績を称える。

 そして嘉弥真は、今季プロに入ってから10年目のシーズンを戦っている。2017年に58試合に登板して以来、嘉弥真は毎年安定したリリーバーとして、最強ソフトバンク投手陣を支えている。