巨人3年目のドラ1左腕が本格化。恩師が語るハーラートップ快走の理由 (2ページ目)

  • 安倍昌彦●文 text by Abe Masahiko
  • photo by Koike Yoshihiro

 正村監督が心配していたのは、高橋の受け身の姿勢だった。

「相変わらずフォアボールは多いし、首脳陣の方はベンチでハラハラしているはずですよ」

 たしかに、ここまで60イニング1/3を投げて、与四球28はセ・リーグワーストである。

「でも、抑えている時はストレートで両サイドをしっかり突けている。とくに左打者の内角を攻められるようになりました。好調の原因を挙げるとすると、そこだと思います。キャッチャーの方もチェンジアップを見せておいて、ストレート勝負というのかな......高橋の持ち味をしっかり生かしてくれて、ほんとありがたいですよ」

 さらに、これまでの高橋と明らかに違っていることがあると、正村監督は言う。

「顔つきですよ。顔つきが去年とまるで違う。仕事ぶりが顔をつくるっていうけど、今年は堂々としていて、立派な顔をしています。以前は打たれると、自信なげな表情をすぐしていたんですよ」

 26日の楽天戦の6回、1点を返されなおも一死一塁の場面で、最初の打席で一発を浴びている岡島豪郎に回ってきた時も慌てたそぶりを見せることもなく、しっかりインコースを突いてセカンドゴロ併殺打に仕留めてみせた。

「去年、ヒジを痛めて悔しい思いをしていた頃も『子どもの寝顔を見ると癒されます』って言っていたし、結婚して、子どもも生まれて、守るべきものができてあいつも変わってきたんじゃないですかね。昔から家族思いなヤツで、弟もすごくかわいがっていました」

 何事もなく、ローテーション投手としてこのままの調子を維持できれば、シーズン15勝以上も夢ではない。

「そんなの無理ですよ。まだ甘いコースに来るし、フォアボールも多い。それでもボール自体はいいし、12勝ぐらいはやってくれるんじゃないかな」

 正村監督にしてみれば、フォアボールは多いが、いい意味での"荒れ球"が高橋に味方しているというのである。

「たとえば塩見は本質的にコントロールがいいので、後半にへばってくるとちょっとだけコントロールがブレて、その球を痛打されることがよくあるんです。でも高橋の場合は完全な逆球になるから、かえってバッターは絞りづらいのかもしれないですね」

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