高津臣吾のクローザーとしての精神面のすごさ。八重樫幸雄「誰にもマネできない一流のものがあった」

  • 長谷川晶一●取材・文 text by Hasegawa Shoichi
  • photo by Sankei Visual

【高津は大好きなタイプの男】

――池山隆寛、広沢克己両選手による「イケトラコンビ」が注目され、長嶋一茂さんも加わり、1990年代初頭のヤクルトはとても明るいチームでした。でも、一方では「上下関係が曖昧になっていった」と八重樫さんは言っていましたが、高津さんの先輩たちとのつき合い方はどうだったんですか?

八重樫 同世代といるときには、みんなでワーワー楽しそうにしていたけど、僕ら先輩に対してはしっかりとあいさつをする礼儀正しいタイプでした。きっと、亜細亜大学の厳しい伝統が身についているからじゃないのかな? 亜細亜の先輩の宮本賢治もそういうタイプだったし、宮本も高津のことをかわいがりつつも、厳しく接していたからね。宮本は、自分が現役を引退してコーチになってからも、亜細亜の後輩には厳しくしつけていましたから。

――自分の仕事は黙々とやり、普段は明るく人懐っこくて、その上、上下関係もきちんとわきまえている。そうなると、完全に八重樫さんの好きなタイプですね(笑)。

八重樫 そうそう、本当に好きなタイプ(笑)。だから、個人的にもずっと応援していたんですよ。

――クローザーとしての高津さんをどのように評価しますか?

八重樫 前回も言ったけど、ここまですごいクローザーになるとは思わなかったな。彼がすばらしかったところは、年々凄みを増していったところ。一球も抜かず、すべてのボールに気迫がこもっていた。ピンチの場面でも決して表情に出さないし、動揺するそぶりなんて微塵も見せなかったですからね。ああいう姿はベンチから見ていても、チームメイトたちからの信頼を得ますよ。でも、彼のすごいところはもっと別のところにあるんです。

――それはどんな点ですか?

八重樫 切り替えの早さ。気持ちのコントロールのうまさ。それは誰にもマネできない一流のものがありました。抑え投手は責任重大でしょ? 普通、自分が打たれて先発投手の勝利を消したり、チームが負けたりしたら落ち込みますよ。しばらくの間は、ネチネチ、グジグジといろんなことを考えるものです。でも、臣吾にはそれがなかった。その点だけでも、すごいことですよ。

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