アテネ五輪、台湾戦で日本ベンチに迫られた重要な決断。高木豊は中畑清に「わざと負けますか?」と聞いた (3ページ目)

  • 浜田哲男●取材・文 text by Hamada Tetsuo

 当時、フリーバッティングではありましたが、相川(亮二)の調子がすごくよかったんです。どこかで使いたいなと思っていて、「ここか?」とも考えましたが、中畑さんは藤本に任せた。結果は内野フライでしたね。

 試合後、中畑さんには「代打は考えなかったですか?」と質問したら、「考えたよ。だけど、ジェフも藤本との対戦は初めてだし、藤本に任せようと思ったんだ」と言っていました。藤本も調子は悪くなかったですし、それを踏まえた判断だったと思うんですけど、あの時に中畑さんの隣にいることができたら、間違いなく「代打いきましょう」と進言していました。でも、首脳陣が3人体制だったから、大野(豊)さんはブルペンにいて、僕は三塁コーチャーズボックスにいた。中畑さんは相談する人がいなかったんです。悔やまれますね。

――相手の先発、クリス・オクスプリング投手を攻略できず、ビハインドでその場面を作ってしまったのも判断を迷わせる原因になりましたね。

高木 オクスプリングは、抑え投手として登録されていたんです。それが先発で出てきたもんだから......奇襲ですよ。その上、データもないので、戦いながら勝機を見つけるしかない。仕掛けも遅くなるし、バッターはどんなボールを投げるか確認するために手を出しづらい。オクスプリングの調子もよく、なかなか打てずに、じりじりした展開が続きました。

 向こうのキャッチャーはディンゴ(2000年に中日に在籍したデーブ・ニルソン。登録名はディンゴ)だったんですけど、日本をいろいろ分析していたようで、うまく抑えられてしまいました。

 その試合では(松坂)大輔が先発だったんですけど、相手はどの打者もよく粘って、凡打で打ち取られた打者をハイタッチで迎えていたんです。大輔は球数が多いということもわかっていて、球数を増やして体力が落ちたところを捉えようとしていました。その時期のアテネは気温が40度近くまで上がることもあって、その日は日差しも強かった。相手は、そうしたことまで計算していたと思います。

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