2021.05.13

名手・荒木雅博がイップスの恐怖に引きずり込まれたウッズの守備範囲

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Sankei Visual

 精神的な重圧、ファーストの守備力、肩の痛み。荒木はすべての言い訳を排除していった。ファーストが捕れないなら、捕れるところへ投げよう。肩が痛いなら、痛くない投げ方を探そう。言い訳をしていたら、レギュラーを守り続けられないのだ。だから荒木は今も「自分がイップスになったのはウッズのせいではない」と強調する。

 希望が見えないなか、荒木がイップスを克服しようと思えた理由は、レギュラーへの執着心だけではなかった。当時考えていたことを、荒木はこのように振り返る。

「自分はいまイップスで悩んでいるけど、普通に試合に入っていける程度に投げられるようになれば、同じように悩む子に声をかけられるよなと感じたんです。もし、あそこで逃げていたら、『おまえは逃げたじゃねぇか』と言われるのは目に見えている。その場だけのことを考えれば、イップスなんてものすごくマイナスなイメージです。でも、克服してやろうと取り組めば、ものすごくプラスになるかもしれない。あの時はそう感じてやっていましたね」

 言い訳に逃げるのではなく、イップスに真正面から立ち向かう。名手と悪魔の戦いが本格的に始まった。

(文中敬称略/つづく)

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