ドラフト最下位、育成契約、戦力外...あきらめない男、ヤクルト今野龍太のプライド (3ページ目)

  • 島村誠也●文 text by Shimamura Seiya
  • photo by Koike Yoshihiro

 今野は4月22日の広島戦(マツダ)でプロ初ホールドを記録。翌日の中日戦(神宮)は同点で迎えた6回にマウンドに向かうも、先頭の阿部寿樹を自らのエラーで出塁させてしまう。この場面について「去年の開幕戦を少し思い出しました......」と振り返った。

「エラーはしてしまったんですけど、気持ちを切り替えて次のバッターに集中しようと、それだけを考えました。そうしないと、またズルズルといってしまうので」

 つづく井領雅貴、木下拓哉を打ち取りツーアウト。代打の石橋康太には四球を与えてしまうも、大島洋平をストレートで見逃し三振。

「手応えというか、指にかかったボールがいっていたので、そのボールで三振が取れたので気持ちよかったです」

 ヤクルトは6回裏に勝ち越し、今野に勝利投手の権利が発生した。試合は7回にも1点を追加したヤクルトが6対4で勝利。今野が移籍後初勝利を挙げた。

「勝ち投手になるということは、そんなに意識していませんでした。本当に試合に勝ちたかっただけなので。『みんな頑張ってくれ』という感じでした(笑)。球団の方に『このあとヒーローインタビューがあるよ』と声をかけられたくらいから、勝利投手になった実感が沸いてきました」

 ヒーローインタビューは、楽天時代に初勝利を挙げた時(2019年5月18日)以来2度目のことだった。

「お立ち台で『最高でーす』と言ったんですけど、本当にそんな感じでした(笑)」

 プロ初ホールドとヤクルトでの初勝利。今野はこのうれしい2日間について「しっかりと0点で抑えて、チームの勝ちにつなげたい。そういう気持ちで投げていました」と言った。

「試合終盤に投げているメンバーがけっこう連投していたので、そういう時だからこそ自分が頑張らないといけないと思っていました」

 クローザーの石山泰稚に、今野の存在について聞くと「コンちゃんですか?」と笑顔を見せて、こんな話を聞かせてくれた。

「僕もああいう場面(大量リードされた展開)で投げたことがありますし、大変な役割だとわかっています。そこで気持ちの切り替えができているかは本人に聞かないとわからないことですけど、しっかりやってくれていると思います」

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