ドラフト最下位、育成契約、戦力外...あきらめない男、ヤクルト今野龍太のプライド (2ページ目)

  • 島村誠也●文 text by Shimamura Seiya
  • photo by Koike Yoshihiro

 それから約2カ月後、一軍に再登録。"空振りが取れる真っすぐ"でチームに貢献し、一軍定着を果たす。

 この2月の春季キャンプでも一軍メンバーとして練習に励んだ。

「真っすぐは前の年からしっかり投げられていたのですが、決め球であるフォークの決まる確率が全然ダメだったので、変化球の制球も含めてそこをしっかりと取り組んできました。去年の後半くらいから本当にいい感じなので、試合でもしっかり投げられたらと思っています」

 そして迎えたヤクルトでの2年目のシーズン。最初の5登板は昨年同様にビハインドの展開だったが、起用のされ方に変化を感じ取ることができる。

3月27日 阪神戦(0対6の3回途中からの登板。2回2/3無失点)
4月1日 DeNA戦(5対7の2回途中からの登板。2/3で2失点)
4月4日 巨人戦(1対2の8回から登板。1回無失点)
4月6日 広島戦(0対2の8回から登板。1回無失点)
4月11日 中日戦(1対2の7回から登板。1回無失点)

 そして4月13日のDeNA戦(神宮球場)では、チームが5点リードの7回表のマウンドに送り出された。リードした場面での登板はじつに8年ぶりとなった。

「『久しぶりだな』という意識はなかったです(笑)。とにかくテンポよく投げて0点に抑えて、いい流れで攻撃につなごうと......。そのことだけを考えてマウンドに上がりました」

 一死後、宮﨑敏郎にソロ本塁打を浴びるも後続を断ち、ヤクルト移籍後26試合目にして自身の投げた試合で初めて勝利のハイタッチの輪に加わった。

「勝って終われたという安心感はありました。言葉で表現するのは難しいですが、(ハイタッチは)今までと違う感覚がありました」

 高津臣吾監督は今野の投球について、「去年の経験が生きていると思います」と言って続けた。

「中継ぎにはいろいろな役割があります。モップアップ(敗戦処理)というか、試合をもう一度つくり直す役割であったり、勝ちをそのままクローザーへ渡す役割であったり......。ここまでの彼はすごくいろいろな役割をしっかりこなしてくれています。どの場面でも信頼してマウンドに送ることができるし、本当にいい仕事をしてくれています」

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