DeNA関根大気が誇る「パワフルな母」との物語。40歳で教員免許、現在はクレープの移動販売 (2ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Sankei Visual

 美華さんの方針で、関根家の3兄妹は小学6年時に地方へ山村留学に出ている。関根は鹿児島県で半年間、生活した。美華さんもアメリカ留学を2年間経験しており、我が子にも留学を通してたくましく成長してもらいたいと願ったのだろう。

 関根はうれしそうな顔でこう言った。

「鹿児島の友達や地域の人とは、いまだに交流がありますよ」

 2019年オフ、関根は単身メキシコに渡り、ウインターリーグに参戦している。見知らぬ土地に臆することなく飛び込み、溶け込む術を得たのは間違いなく幼少期の体験だと関根は考えている。

 メキシコに滞在した時期は、公用語のスペイン語をあまり話せなかった。だが、帰国後にコロナ禍で時間ができると、スペイン語の文法を勉強し直した。今では自身のTwitterアカウントで近況を発信する際、スペイン語も併記している。メキシコで世話になった人々に向けてのメッセージなのだ。

 関根は言う。

「出会った人々との縁を感じますし、それが人生のなかでどんどん増えていっている実感があります。いろんな人に支えられて、応援されているなと感じます」

 そして、関根は笑いながらこんなことを打ち明けた。

「僕には『お母さん』と呼んでいる人が3人います。1人は実の母で、あとは鹿児島で半年お世話になったお母さん。それと(キャンプ地の)沖縄でよくご飯を食べに行くところにもお母さんがいます」

 毎年母の日がくると、関根はピンク色の野球用具を購入して身につける。ピンク色のレガース、ピンク色のリストバンド、ピンク色の練習用バット......。使い終わると、各地の「お母さん」に贈り届ける。それが関根にとっての「カーネーション」なのだ。

 それにしても、気になるのは実母・美華さんが始めたクレープ店だ。クレープの味について尋ねると、関根は「めちゃくちゃおいしいですよ」と答え、こう続けた。

「僕は食事制限をしていて、デザートを食べることはないんです。小麦粉や生クリームをとらないようにしているので......。でも、母のクレープは米粉で生地をつくっていて、チョコもカカオに甜菜糖(てんさいとう)を混ぜてつくっている。健康にいい素材を使っているので、僕でも食べられるんです」

2 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る