DeNA牧秀悟が新人王に向け絶好調。打撃スタイルと菅野・戸郷の衝撃を語る

  • 菊地高弘●取材・文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Sankei Visual

―― 「ルーキー感がない」と言われるのではないですか?

 そう尋ねると、横浜DeNAベイスターズのドラフト2位ルーキー・牧秀悟は少し困ったような顔をしてこう答えた。

「それはよく言われます。でも、まあ若手なので、一応」

 こうして会話しているぶんには、新人らしい初々しさは垣間見える。だが、球審のプレーボールがコールされた瞬間から、牧はこの世界で10年くらい禄を食むようなベテランのムードをまとう。

開幕以降、勝負強いバッティングを見せるルーキー・牧秀悟開幕以降、勝負強いバッティングを見せるルーキー・牧秀悟

 身長178センチ、体重93キロと厚みのある体に、年齢以上に貫禄を感じてしまう顔立ち。グラウンドでの落ち着き払った振る舞いや、開幕から外国人選手が本格合流するまで与えられた「3番ファースト」の役割に至るまで、新人らしからぬ要素が揃っている。

 そして、もっとも新人らしくないのは、牧の残している数字だろう。

 21試合に出場して打率.333、6本塁打、18打点(4月19日現在)。牧は「正直言って、最初からこんなに結果が出るとは想像していませんでした」と明かす。

 2月の春季キャンプでは、プロの高いレベルに圧倒されるばかりだった。

「バッティング練習でも、試合に入っても、一流のバッターは1球でとらえてしまう。これはすごい世界だなと」

 DeNAには、牧と同じ右の強打者タイプの宮﨑敏郎がいる。「インパクトの瞬間だけ力を入れる部分を参考にしています」と、大先輩からヒントを得ることもある。その一方で、宮﨑の打撃が天才的すぎて参考にならないとも感じていた。

「宮﨑さんのバットの軌道を映像で見ると、他の人よりも何倍も内側を通って無駄のないスイングをしていることがわかるんです。そこは特殊すぎて、とても真似できないですね」

 宮﨑や大和、佐野恵太など、助言を惜しまない先輩のおかげで牧は少しずつプロの世界に適応していった。彼らが一様に説いたのは、「自分のスタイルを変えるな」ということだった。

「プロではストライクからボールになる変化球を投げるピッチャーがほとんどですけど、先輩方からは『慣れるのが一番』と教えてもらいました。何よりも大事なのは『自分のバッティングスタイルを変えずに貫くこと』と言われています」

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