「やっぱりきつかった」宮國椋丞の本音。巨人で開幕投手を務めた男が背番号106から再出発 (4ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Kyodo News

 かつてのボールを取り戻せていたら、宮國椋丞という投手は20代で戦力外通告を受けるような存在ではなかったはずだ。それでも這いつくばって現役に執着を燃やした背景には、サポートしてくれた人々への感謝の思いがあった。

「ひとりでは絶対にできなかったし、あきらめていたと思います。周りの方々の支えがあって、ここまでできました。野球で出会った方々に、野球を通じて恩返しがしたい。その気持ちが僕の支えになっていました」

 NPBからのオファーがなければ、国内独立リーグでプレーして、支配下登録期限まであきらめずにプレーする。そう決めていた。

 3月上旬、待ちに待ったオファーが届いた。投手陣補強を狙うDeNAからテスト参加の打診があったのだ。横須賀市のDOCK(ファーム施設)で投球を披露した宮國は「アピールできたかはわかりませんが、いつもどおり投げられました」と振り返る。

 育成選手契約は勝ち取ったものの、もちろんゴールではなく通過点でしかない。今後の課題を聞くと、宮國は「試合感覚」を挙げた。

「バッターに投げることもまったくなかったですし、ほかの選手に比べて実戦ができていないので。そこは徐々にアジャストしていければなと」

 3月31日にはイースタン・リーグの古巣・巨人戦で実戦初登板。2回を投げ、1失点だった。最高球速は147キロを計測している。

 トライアウトや1月の自主トレ中はサイドスローに近い位置から腕を振っていたが、今は「だいぶ腕の位置が上がって、強いボールが投げられている」と手応えがある。

 最後に契約をしてくれたDeNA球団への思いを聞くと、宮國は意を決したようにこう語った。

「獲っていただいたので、ベイスターズのためにも1日でも早く支配下を勝ち取って、一軍のマウンドで早く勝利に貢献したい。その思いだけですね」

 もはやホープと言える年齢ではなくなった。それでも、地獄を見た人間は強い。宮國椋丞のプロ野球人生・第二章が始まった。

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