2021.04.01

青森の畳職人が都市対抗で一世一代の投球。変わり種サウスポーがプロの扉をこじ開けた

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Sankei Visual

 畳に触れる機会を増やすため、知り合いの革職人とタッグを組んで、バッグや財布などの革製品に畳をスタイリッシュに組み込む商品を開発した。

「おかげさまでオリジナリティーがあると好評をいただいています。国産のいいイグサを使っているので、時間が経過するといい感じに変色するんです。長く使うものだからこそ、時間とともに楽しんでいただけるといいなと」

 かつて「どうせ自分なんて田舎者だし」と卑下した姿は、今はもうない。本業に勤しむ傍ら母校・八戸西の野球部コーチを務め、2020年秋に同校は東北大会ベスト8に進出。今春の選抜高校野球大会では21世紀枠として甲子園に初出場した。

 母校の後輩に、中村は人生を変えた東芝戦の話をすることがあるという。

「高校生は試合で緊張して、自分の力を出し切れない子も多いと思います。そんな子には東芝戦の前の日、自分がどう過ごしたかを話すんです。あの夜、平常心になれたことでいいスイッチが入った。ほどよく緊張感を持って、楽しく投げられた。あれは自分にとって大きな教訓になっています」

 畳屋からプロへと羽ばたいた変わり種サウスポーは、青森の地で畳と野球の奥深さを伝え続けている。

(おわり/文中敬称略)

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