大打者・若松勉は広岡達朗に認められず。「しばらくの間、一緒にいたくない」

  • 長谷川晶一●取材・文 text by Hasegawa Shoichi
  • photo by Sankei Visual

【お酒大好き、カラオケは裕次郎が十八番】

――若松さんが打撃開眼したのは、中西太さんとの出会いが大きかったと言われていますが、もともとの素質も高かったんですね。

八重樫 素質はあったと思いますよ。若松さんぐらい素質があったのは、その後では青木宣親ぐらいじゃないかな? でも、青木と比べると、若松さんの方が数十倍は練習量が多かった気がする。もちろん、青木もすごく練習していましたけど。

――入団早々、打線の中心になりましたからね。

八重樫 それまでの国鉄、サンケイ時代を考えると、スワローズは投手のチームだったんです。金田正一さんのイメージがとても強くて。ようやく、スワローズにいいバッターが出てきたのが、若松さんからじゃないのかな? そこから僕たち若手は若松さんを目指して、「オレたちも続くんだ」という気になっていったから。

――八重樫さんも刺激を受けて、若松さんを目指したんですか?

八重樫 バッターとしてのタイプも体格も全然違うけど、若松さんの活躍は、ものすごく刺激になりましたね。

――現役時代も、監督時代も、現在の評論家時代も、いつも穏やかな印象がありますが、プライベートの若松さんはどんな方なんですか?

八重樫 お酒が大好きな人ですよね。ただ、全然乱れないんですよ。誰とは言わないけど、他の選手はお酒を呑んで乱れたり、あるいは逆に酔ってないのに、酔ったふりをして女の子のほうにいったりした人もいたけど、若松さんはそんなことは一切なかった。ひたすら呑んで、食べてで、全然女っ気がないんです。きっと、酒場の雰囲気が好きなんだろうな。雰囲気を楽しんでいる感じでした。

――理想的な酒の飲み方じゃないですか。飲んだ後は真っ直ぐ帰るんですか?

八重樫 若松さんはお酒も好きだけど、歌うのも好き。だから、飲みながらカラオケもよくしていました。だいたい、(石原)裕次郎でしたね。その後、若松さんと仲がよくなってからは「若松さん、裕次郎歌ってよ」って、よくリクエストしましたよ。

――若松さんは、どんなリアクションなんですか?

八重樫 若松さんは、歌うのが好きなくせに、自分からは決して歌わないんです。だから、僕が先に曲を入れておいて、イントロが流れてから「さあ、歌って!」と言うと、ようやくそこでマイクを持って歌い始める(笑)。とにかくきれいな飲み方をする人なんです。

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