佐々木、奥川より早くブレイクか。オリックス宮城大弥には制球力、分析力がある

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • photo by Koike Yoshihiro

「去年の8月くらいから、左バッターに対してプレートの三塁側を踏むようにしています。ピッチングをしていたら左バッターのインコースへの投げづらさを感じて......その話を酒井(勉/当時は育成コーチ)さんにしたら、『プレートを踏む位置をずらしてみたらどうか』と言われました。

 実際にやってみたら、意外とストライクゾーンが広く見えたんです。一塁側を踏んでいるときは左バッターの身体が邪魔をしてストライクゾーンがアウトコースしか見えなかったのに、三塁側に立ったらインコースも見える。小さく見えていたストライクゾーンが大きく見えて、これならインコースを使えるなって思いました。バッターの人に訊くと、インコースを見せられると、アウトコースがより遠く感じるらしく、そこは自分の思いどおり、幅が広がったなと思います」

 オープン戦の宮城は3試合に先発して2勝、防御率は1.13。できる準備はすべて終わらせて、プロ2年目のシーズンを迎えようとしている。宮城はこう言った。

「どのチームでも、クリーンアップを打つような人は、ピッチャーにイヤだな、と感じさせる雰囲気を出してきます。どのボールでも打てるよ、という感じで打席に入ってくるんです。だからこそ、そういうバッターとの駆け引きは大事になってきますし、自分自身、周りを見渡す力がまだまだ足りていない。だから今年は、もっと精神面で余裕を持って投げていきたいなと思っています」

 新人王の資格も残るプロ2年目──球史を紐解くと、高卒2年目にブレイクしたピッチャーは何人もいる。

 1983年にはジャイアンツの槇原寛己が12勝(9敗)を挙げて新人王を獲得、2006年にはファイターズのダルビッシュ有が12勝(5敗)をマークして日本一に貢献した。同じ2006年にはライオンズの涌井秀章が12勝、2008年にはカープの前田健太が9勝、2014年にはファイターズの大谷翔平がピッチャーとして11勝を挙げて、ブレイクを果たした。そして1987年、ジャイアンツの桑田真澄は宮城と同じく高卒1年目にプロ初勝利(2勝)を挙げて2年目に15勝と大きくステップアップ、沢村賞まで獲得した。

 高卒2年目のブレイクは決して現実味のない話ではない。2ケタ勝利へ、今の宮城にも彼らと同じ匂いが漂っている──。

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