「開幕はエース」の時代の終わり。変わりゆく野球と近年のローテーション事情 (2ページ目)

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro
  • photo by Koike Yoshihiro

"格"や"プライド"よりも、データをもとに勝つ確率を求めての起用といえる。

「開幕カード、2戦目の相手を見て、誰をどこで投げさせればいいのか......。相性を考えながら、ローテーションが決まっていくイメージです」

 ソフトバンクや巨人といった特定チームを意識して、エースをぶつけていくローテーションを組むだろうし、その逆もあるという。

「勝てる確率を考えて、チームの軸となる投手を開幕ではなく、2戦目や2カード目の頭に持っていくという考えもある。逆に、分が悪いとわかっていても、あえてぶつけて、3連勝を狙うということもある。そのあたりは監督の考えだけど、いろいろシミュレーションするなかで開幕投手やローテーションが決まっていくんです」

 2カード目の頭にエースが回るケースについて、近年の投手事情も含め、次のように語る。

「阪神の西(勇輝)なんかは調整が遅れた関係で2カード目に回るみたいだけど、そういうのは別にして、オレらの時代の先発は中4日が当たり前だった。それがある時から中5日になって、今は中6日が普通。中4日なら、開幕で投げて、2カード目も投げるから相手の相性なんて考えなくてよかった。でも今は1週間に1回しか投げないから、どうしても相性を考えてしまう」

 そもそも、かつては相性が悪かろうが、開幕戦はエースが投げると決まっていた。だが佐藤は「今は誰が見てもエースというのは、菅野くらいじゃない?」と、近年のエース事情について言及する。

「エースが育ちにくい時代になってきたんだろうね。当然、先発としていい成績を続けることが一番なんだけど、去年なんて規定投球回数に達した投手はパ・リーグが8人で、セ・リーグは6人しかいない。先発として圧倒的な数字を残しにくくなっていて、20勝なんて夢の話になりつつある。ダルビッシュ(有)や田中(将大)が日本でずっと投げ続けていたらそういう存在になったんだろうけど、今はエースの風格が出てきたところでメジャー挑戦というのもあるしね」

 ダルビッシュ、田中以外にも、前田健太や菊池雄星らが日本で投げ続けていれば、誰もが認める大エースになり、迷うことなく開幕を任される投手になっていたはずだ。

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