2021.03.18

エースのジョーvsカネやん。惨敗した金田は洋服を仕立ててくれた

  • 高橋安幸●文 text by Takahashi Yasuyuki

 肩透かしを食らったような気になったが、1年目でエースの座にのし上がった城之内さんは2年目の63年を除き、67年までずっと勝ち頭だった。実際に「そのまま」エースであり続けたわけだし、その間、巨人は65年からV9時代を迎えることになる。

 V9を支えたのはONを中心とした打線、投げるほうでは堀内恒夫、高橋一三と言われがちだが、それ以前からエースだった城之内さんの存在なくして果たせなかったのだ。

「ただね、単にそのまま行ったわけでもない。4年目にカネさんが入ってきて、また競争ができてよかったんだよ」

 65年、金田正一(まさいち)が国鉄から巨人に移籍。その時点で通算353勝を挙げていた大投手をライバルに定めたとは、すご過ぎる。

「川上さん、喜んじゃってよぉ。『金田、金田』って大変なんだよ。だってよ、通算で350も勝ってりゃ、年間30近く勝てると思ったんじゃない? だから俺、負けられないなと。大投手だからって、話を聞いて参考にするとかよりも、やっぱり競争、勝負だよ。『1勝3000円でやろうか』って言って。で、あの人が来て2年目、成績悪かったろう?」

 持参した資料に視線が向けられた。66年、金田は4勝に終わっている。

「だろ? 俺が21勝ったんだよ。17の差なんだよ。1勝3000円だから5万1000円なんだわな。実際、カネさんに『おまえ、これやるよ』って言われたんだ。でも俺、『記念に何かください』って言ったんだよ。そしたら、洋服作ってくれてね」

 つい最近あったことのようにうれしそうに話す様子を目の前にして、両投手の関係性が球史に刻まれた出来事に思い当たる。金田が400勝を達成した試合、城之内さんが先発していた。

「ああ、その日は運よく俺が投げただけ。あのときは川上さんが『全部、金田に協力しろ』と。当時のカネさんは先発して勝つのが難しくなってたから、先発ピッチャーが4回まで投げて勝ってたら交替、って決まってた。それがたまたま俺のときだったの」