2021.03.18

ルーキーが巨人の開幕投手に。5年で101勝したニヒルな「ジョー」

  • 高橋安幸●文 text by Takahashi Yasuyuki

「下」とは下半身を意味する。現状の澤村は上半身の力で投げているため、疲労がたまったときに力んで投げた場合、肩・肘を故障しやすいという。

「下を使えるようにするには、どんどんどんどん走ること。だから『下を使えば楽で、いいボールほうれるよ』って言ったら、『わかりました』とは言ってたけど、今の体でいい結果が出てるから、これ、難しい問題なんです」

 城之内さんは身を乗り出して言った。コーヒーが運ばれてきて、「あったかいうちにどうぞ」と勧めてくれながら、さらに言葉が続いた。

「澤村の場合、今の体で投げるボールでも、プロで力勝負できる。ボールに力のあるピッチャーがあんまりいないなかでは、すごいことなんだわ。だったら、なまじっか細かいコントロールなんかつけるよりも、どんどん力で押してったほうがいいんじゃないかなあ。どうせ、ど真ん中を狙ったって、ど真ん中に行かないんだもん。どっちかに行くもんなんですよ。ど真ん中を狙っていつもど真ん中に行ったら、大変なピッチャーになっちゃう」

 急に目が大きく見開かれ、面と向かって初めて笑みがこぼれた。「ボールに力のあるピッチャーがあんまりいない」ということは、現状の巨人投手陣のなかでも澤村のボールがいちばん力がある、と言えるのだろうか。

「そう言っていいと思うな。だから投げてほしいなあ、開幕。そしたら、ほかのヤツは奮起するよ。内海(哲也)だとか東野だとか。二人とも、去年は防御率3点いくつとか4点いくつとかでしょ? 俺に言わせりゃ、そんな数字じゃ、我々の時代だったら相手にされないよ〜、ほんとに。エースだって言われてんなら、それは悪くたって2点台後半ですよ」

「我々の時代」という言葉が出てきたところで、城之内さん自身の「開幕」までの道のりが知りたくなる。新人開幕投手の背景には、投手陣の台所事情があったからなのか。それとも、当時の川上哲治監督に何か考えがあったからなのか。