ルーキーが巨人の開幕投手に。5年で101勝したニヒルな「ジョー」 (2ページ目)

  • 高橋安幸●文 text by Takahashi Yasuyuki

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 東京・大田区、東急池上線の駅で城之内さんと待ち合わせた。高くて厚みもある鼻が際立つ彫りの深い容貌は、往年のアクション映画に由来する[エースのジョー]という愛称、その語感が醸し出すイメージにぴたりと合致する。黒い柄物のセーターに黒のブルゾンを羽織り、スボンも黒で統一されたスタイルとあいまって、71歳という年齢(当時)を感じさせない。

 野太い声で「お茶飲み行こう」と案内されたレストランが取材場所になった。ご自宅から近い行きつけのお店で、窓際の席に座った城之内さんは穏やかな表情で「コーヒーでいいの?」と尋ねて注文してくれた。緊張が一気に解け、僕は早速、澤村の話を切り出した。

「今も俺としては、澤村に開幕投手をやってほしいんだな。いいじゃない。新人だからダメってことはないんだから。負けても何してもいいじゃない」

 取材を申し込んで面会の日が決まったあと、原監督は東野峻を開幕投手に指名し、澤村の可能性はなくなっていた。それでも城之内さんは澤村を推している。投手として高く評価しているからこそだろう。

「体型、ボールの力、勢いは素晴らしいね。で、名前もいいんだわな。大投手と同じだから。俺は大投手の沢村さんを見たことないから比べられないけども、まず名前が素晴らしいわ」

 黎明期の巨人のエースにして、球史に残る伝説の投手、沢村栄治と同じ姓であることが強調される。気持ちがなごむようなアクセントが入り混じる口調は、声のトーンが低いわりに早くて歯切れよく、温かみもある。

「ただね、澤村の体はウエイトトレーニングで作った体なんです。ピッチャーの体はそれじゃあダメなんだけど、彼は大学時代、それでよくなっていった人だから、これからどういう考え方でやっていくか。で、俺が自主トレで彼に会って伝えたのは、『下を使ってほうれるようになったら、まだまだよくなる』ってこと」

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