巨人・戸郷翔征は桑田コーチの指導をどう思っているか。「先発完投135球」と「ライン出し」 (4ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Ichikawa Mitsuharu(Hikaru Studio)

「アーム式」と呼ばれる大きな腕の振りは、今まで多くの指導者から「直したら?」と提案を受けてきた。だが、戸郷は常に自分の投げやすいフォームを追求してきた。

「僕はこの投げ方で投げたいというのを貫き通して、今、ここまできました。どんなに故障しそうな投げ方でも、その人にとって投げやすかったり、球速が上がっていったり、それが一番自分に合ったフォームということなんじゃないかと感じます」

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 戸郷の名前が一躍知られるようになったのは、高校3年夏の甲子園大会後。侍ジャパンUー18代表の壮行試合として宮崎県選抜との試合が組まれ、快投を見せる。

 Uー18代表はその試合で最終回に登板した吉田を含め、根尾昂(中日)、藤原恭大(ロッテ)、小園海斗(広島)と同年ドラフト1位でプロに進むことになるエリートが居並ぶ豪華布陣だった。戸郷は5回1/3を投げて9奪三振。強烈な存在感を放った。

 戸郷はこの試合、「同い年で活躍している選手には負けたくない」とライバル心を燃やしていた。その一方で、こんな思いも抱いていたという。

「自分はプロを目指していましたし、(プロは)あれ以上の選手がたくさんいると思っていたので、レベルの高い選手は打ち取りたいと考えていました」

 エリートへの反発心とあくなき上昇志向。それがドラフト6位入団から短期間で主力選手へと上り詰める原動力になったのだろう。

 とはいえ、昨年は初めて年間通してローテーションを守ったことで、心身とも疲労を感じたという。戸郷は「苦しい時のほうが多かった」と振り返る。

「そのなかでも勝てたら喜びを噛みしめられましたし、今年はそれ以上の活躍がしたいですね」

 戸郷は今の自分を「いい環境で投げられている」ととらえている。トレーナーなど一流のケアをしてくれるスタッフに支えられてコンディションを保ち、一流の強打者と対峙してひりついた戦いに身を投じる。心身に負荷はかかるが、自分が成長している実感がある。戸郷は「その意味ではいいトレーニングになっているのかも」と語る。

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