「○○打法」に「○○魂」。楽天・島内宏明の面白コメントから読み解く打撃理論 (3ページ目)

  • 田口元義●文 text by Taguchi Genki
  • photo by Koike Yoshihiro

 島内によると、浅村のバットは840グラム。軽ければ830グラムもあるのだという。プロ野球選手が扱うバットの平均としてはかなり軽いほうだ。自身が所有するそれと比べると、最大で60グラムほどの差がある。

 打者にとってバットとは、「体の一部」と言っていいほど重要だ。そのパートナーがこれほどまで様変わりするとなると、むしろ打撃に悪影響を及ぼすのではないか? そんなことも考えられるが、この時の島内は体が万全ではなく、むしろ軽いバットのほうが操作しやすかったのである。

 そしてもうひとつ。浅村のバットで打つことで高められた技術があった。フォロースルーである。

 昨季は浅村と、主に「4番、5番コンビ」を組むことが多く、島内はその打撃を間近で見続けてきた。

「自分の考えとはまた違った部分というか、吸収できるところも多い。フォロースルーが、やっぱりきれいなので、自分も結構そこはこだわっている部分でもあるんで、聞いたりはしましたね」

 浅村のそれは、最もボールに力が伝わりやすいとされる腰付近で、スムーズにバットを振り切れているという。島内が続ける。

「コースとか球種によって違う時もあるんですけど、だいたいが肩より低い位置でバットが振り切れているんですね、アサは。なので、『フォロースルーが安定しないと、ラインドライブがかかったりするから大事』とか、そういう話をしたりですね、はい」

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 その成果を、島内ははっきり残している。猛打賞を記録した9月6日のオリックス戦。3回の本塁打後のコメントがそれだ。

 <試合前に浅村師匠にフォロースルーについて教えていただきました。普段からいろいろアドバイスをいただいているので本当に感謝しかありません。ありがとう、ヒデト>

 昨季の足跡をたどれば、このあたりから「打法」を使った談話が増えていった。

 コンディションが悪かろうが、バットを変えようが、極端に成績を落とさない。コメント同様に変幻自在の打撃を実現させたのは、浅村直伝のフォロースルーがあったから? こちらのそんな思惑を見透かしたように、島内は笑いながら首を横に振る。

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