「○○打法」に「○○魂」。楽天・島内宏明の面白コメントから読み解く打撃理論 (2ページ目)

  • 田口元義●文 text by Taguchi Genki
  • photo by Koike Yoshihiro

 島内のコメントは面白い。本人も身内に向け少なからず狙っているように、それは紛うことなき事実である。だがそれらも、一つひとつ行間を読むように理解に努めると、その時の島内の打撃状態が浮き彫りになることだってある。

 頻繁に出てくるところで言えば、「〇〇打法」がそう。おもなコメントは以下のとおり。

 <最近、新人小深田に打撃の極意を伝授してもらいました。まだまだコブ兄にはかなわないですけど。(コブ兄打法です)>(9月29日のソフトバンク戦)

 <黒川のバットを借りました。練習でいつも使っているんですけど、相当グッドなバットで。試合ではグッしなりで打つことができました。フミヤ打法です>(10月22日のオリックス戦)

 <小郷が躍動しているので、自分も負けないように打ちました。ただそれだけです。
企業秘密のGP打法です>(10月29日の西武戦)

 独特の言い回しで表現しているが、これらの場合は黒川史陽のくだりにもあるように、チームメイトからバットを借りて打つことが多かった。ちなみに、島内いわく「一発目は必ずヒットが出た」そうだ。

「たまたまなのか......そこはわからないですけど、ヒット出てましたね。バットを借りてたのは、自分の体調によって全然、感覚が違うし、『今日はこれが合うけど、これは合わなかったな』っていうのがあったんで」

 島内自身のバットのサイズは、重さが890グラム前後で、長さは86センチ。体力の消耗が激しい夏場など、コンディショニングの調整が難しい時期にはグラム単位で重さを変えたり、バットには細心の注意を払っている。

「基本的には自分のバットを使いたいんですけど、去年は本当にいろんなところが痛くて、バットを振れない時期があったんです。その時にアサのバットを使ったのが初ですかね。そこから、いろんなバットを試しました」

 きっかけはアサ──楽天不動の主軸である浅村栄斗のバットが、満身創痍だった島内の打撃低下を食い止める一助となった。

 この証言から導き出される試合。それは、おそらく8月11日の西武戦だ。7回のチャンスでタイムリーを放った島内のコメントは、最後にこう結ばれていた。

 <浅村栄斗魂です>

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