野村克也の息子・カツノリの第一印象。八重樫幸雄「致命的な欠点が...」

  • 長谷川晶一●取材・文 text by Hasegawa Shoichi
  • photo by Sankei Visual

【トレードによって人生は大きく変わる】

――当時のヤクルトには「古田敦也」という不動の正捕手がいて、二番手には後に日本ハムに移籍後にレギュラー捕手となる実力派の野口寿浩さんがいて、カツノリさんは三番手というチーム状況でしたよね。

八重樫 古田が盤石の状態だったから、その中で出番をつかむのはなかなか難しいのは確かでした。カツノリはそうでもなかったけど、野口はいつも愚痴ばっかりだったよ。いつも、「僕は野村さんに嫌われてるから......」と言っていたね(笑)。

――それは実際にそうだったんですか? それとも、思い込みですか?

八重樫 思い込みですよ。アイツは被害者意識が強すぎるんです。だから、僕も彼に言いました。「お前、バカか? 監督の顔色をうかがうんじゃなく、大切なのはお前自身だろ。有無をも言わせぬ実力を発揮できるように頑張ればいいじゃないか」って。

――当時、野口さんが「トレード志願」しているという雰囲気はありましたよね。

八重樫 実際に志願していたし、本人の耳に入っていたかはわからないけど、他球団からも話はあったと思います。彼とそういう話をしたこともありました。僕としても、「野口は、他球団に行けば出場チャンスが増えるだろう」と思っていたしね。

――結局、1998年の開幕直前に、日本ハム・城石憲之さんとのトレードが成立しました。

八重樫 あれは、野口にとっていいトレードだったと思います。実際に、日本ハムでは正捕手になったし、オールスターにも出られたわけだし。ヤクルトから日本ハムに行って、その後は阪神、横浜でプレーをして、2017年、18年はヤクルトのコーチをした。いい野球人生を送っていると思いますよ。野口がトレードされた結果、カツノリも古田に続く「二番目の捕手」という立場に変わったわけだし。

――選手個人の人生はもちろん、チーム内の化学変化など、ひとつのトレードにはさまざまな物語がありますよね。

八重樫 僕は経験ないけど、トレードというのは選手にとって、とても重要なことですからね。野村さんがチームを去って、若松(勉)さんが監督になったら出番も減って、カツノリも阪神に移籍。その後も、巨人、楽天といろいろな経験を積んだ。その結果、ヤクルトでも、巨人でも、楽天でもコーチを経験しているんだから、どうなるかわからない。それにしても、今回はカツノリの話から始まったけど、最後は野口の話になっちゃったね(笑)。

(第55回につづく)

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