巨人・秋広優人の打撃に見た独特の感覚と品。王貞治以来の快挙なるか

  • 安倍昌彦●文 text by Abe Masahiko
  • photo by Ichikawa Mitsuharu(Hikaru Studio)

 秋広優人を初めて見たのは、二松学舎大付高校2年秋の都大会だった。第一印象は、背が高いだけで、まだ非力さが目立つ選手だった。プログラムに記された「198センチ」そのままに、手足が長く、ヒョロっとしたシルエットが印象に残っている。

 お目当ては、1年夏から捕手として活躍していた山田将義(現・中央大)で、秋広は「6番・ファースト」で出場していた。

 この試合での秋広は、犠牲フライと内野ゴロ......残念ながらキラリと光るものを見ることはできなかった。

高卒ルーキーながら一軍キャンプに抜擢された巨人・秋広優人高卒ルーキーながら一軍キャンプに抜擢された巨人・秋広優人 それが昨年夏、独自大会で見た秋広はまるで別人のようだった。先発で投げて、途中から一塁の守備に就いたのだが、超大型選手にありがちな"バラバラ感"がまるでない。198センチの身長が182センチに見えるぐらい一連の動作がスムーズで、躍動感があった。

 投手としてマウンドに上がれば、けん制やバント処理も鮮やかにやってのけるし、バッティングも変なクセがなく、ミート力の高さが光っていた。

 びっくりするようなスピードでなくても、カーブ、フォーク、チェンジアップ、スライダー......多彩な変化球を駆使して、投げ損じの抜け球、逆球がほとんどない。高校生で2メートル近くあれば、ぎこちなさやアンバランスさが出るものだが、3年夏の秋広にはそれがまったくなかった。

 翌日のスポーツ紙に、「柔軟性なら鈴木誠也(広島)以上」という市原勝人監督の談話を見たが、「なるほど」と思ったものだ。

 それから半年が経ち、スポーツ紙で巨人ドラフト5位ルーキー・秋広の名前を頻繁に見かけるようになった。

 身長2メートルの高卒ルーキーがバッティングで快打を飛ばし、紅白戦では期待の若手投手からヒット。2月23日のヤクルトとの練習試合でも2本の二塁打を放ち、巨人では王貞治氏以来となる62年ぶりの高卒野手の開幕スタメンが現実味を帯びている。

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