「ペース配分をするな」ラミレスが選手、監督として実践した「対パ」対策 (3ページ目)

  • 長谷川晶一●取材・文 text by Hasegawa Shoichi
  • photo by Sankei Visual

 幸いにしてDeNAには、前述した今永、石田、濱口に加え、2018年入団の東克樹と左の好投手がいただけに、ラミレス氏は交流戦の戦いにも手応えを感じていた。彼らにはまだ若さがあり、勢いがあった。しかし、彼らに対してラミレス氏は何度も何度も同じことを説いたという。

「今永、濱口、それぞれまだ若いのでスタミナもあります。長いイニングを投げることも可能です。でも、私は彼らに対して、『7回、8回、9回を投げようと思うな』ということは何度も言いました。いまだに野球界には『先発投手は長いイニングを投げるべきだ』という考えがありますが、相手打線が三巡目になる6回くらいに、先発投手が捕まって敗戦するケースはとても多い。ならば、先発投手には、『長いイニングを投げるためにペース配分するのではなく、目の前の1イニングに全力投球しろ』と言い続けました」

 ソフトバンクには質量ともに充実した豪華投手陣が揃っているため、先発投手たちは「自分の後には優れた中継ぎ陣がいる」という思いで、初回から全力投球を続けている。ラミレス氏はこの点に着目していたという。だからこそ、自軍の若き投手たちにも「決してペース配分をするな」と言い続け、交流戦においても実践してきたのだ。

【「積極的にインコースを攻める」という投手と捕手の意識改革】

 さらに、DeNAが誇るサウスポー陣に対しては、「具体的な配球の指示もしていた」とラミレス氏は述懐する。

「前回も言ったように、パ・リーグには速球派投手が多いため、打者も速球の対応には自信を持っています。そうなると、左投手のチェンジアップ、フォーク、カーブでストライクを取ったり、右打者に対してバックドアでカウントを整えたりすることが有効なんです」

 ラミレス氏の言う「バックドア」とは、打者から見て外側のボールゾーンからストライクゾーンに変化球を投げてストライクを取る投球を指す。前回述べたように、投手不利のカウントでもインコースにストレートを投げ込むパ・リーグの野球とは正反対の攻め方こそ有効だと、ラミレス氏は訴える。

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