その周到な準備や洞察力は「神」の領域。鈴木尚広はこうして27.431mを支配した (4ページ目)

  • 中島大輔●文 text by Nakajima Daisuke
  • photo by Sankei Visual

── だから試合中はベンチから、グラウンドにいるような感覚で見ていたのですか。

「そうです。ビデオで見て、ベンチで見て、初めて塁上に立った時、ちゃんと同じように見えるか。見えなかったら、迷うじゃないですか。その時は、そこのクセは見ないようにします。反応だけでスタートしていました」

── まるで研究者のようですね。

「そうしないと勝てないんです。相手も研究してきますからね。いかにスタートの誤差を小さくするかがすごく大事なんです。それにピッチャーによって間合いも違います。それが3秒なのか、4秒なのか、5秒以上なのか。速いけん制の時は3秒以内に来るとか。タイプ別にA、B、Cに分けていました。そうすれば基準値が見える。とくに『バッター集中』と場面になると、絶対クセが出てくるんですよ」

── データベースを自作していくのですね。

「手帳にほとんどのピッチャーの特徴を書いていました。クセを修正してきた場合、『この試合は修正して直っていた』と書きます。直っていなかったら『継続』と書き、日々アップデートしていく。そうやってデータベースができますが、鵜呑みにはしません。何度も予習と復習を繰り返して、前回とどう違うかを把握する」

── そうやって成功率を高めていたのですね。さすが「神の足」と言われるだけあって、すごい領域にいますね。

「そんなことないです(笑)。代走として試合に出ていなかったら、こんなことを考えなかったと思います。失敗したくないから、あらゆる方面からアプローチしていかなければならなかったということですね」

おわり

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