その周到な準備や洞察力は「神」の領域。鈴木尚広はこうして27.431mを支配した (2ページ目)

  • 中島大輔●文 text by Nakajima Daisuke
  • photo by Sankei Visual

── たとえば西武の金子侑司選手は1番や9番で先発起用されるなか、塁に出たらどんどん走ってきます。代走とスタメンでは、意識も違ってくるのでしょうか。

「西武の辻(発彦)監督は、『失敗してもいいから、どんどん走れ』と言っていますよね。だから走者はアウトでもOKという考え方ができる。僕も金子くんの立場なら『失敗してもいい』と開き直り、何回もトライしていたと思います。うらやましいですよね。代走は『アウトOK』ではないので」

── 仕掛けるチャンスも一度しかありません。

「盗塁の失敗が増えていくと、急にサインが出なくなるんです。原(辰徳)監督はよく、『走っちゃいけないケースはないけど、アウトになっちゃいけないケースはある』と言っていました。そこが難しいところですが、経験を重ねるうちに、『こういう時は走ってはいけない』とわかるようになってきました。走る意味を深く考え、野球の知識として勉強させていただきましたね。ただ走るだけではダメだな、と」

── そういう思考になるうえで、影響を受けた選手は?

「誰もいません。代走になってから、自分で考えるようになりました。赤星(憲広/元阪神)さん、荒木(雅博/元中日)さん、福地(寿樹/元ヤクルト)さんなど、各チームに走れるランナーがいました。そういう人たちを見て、こういうタイミングで走るのか、どこに重心を置いているのかなど、参考にしました。気持ちは二塁に行こうとしているけど、体はちょっと受け身になっているとか......」

── 頭と体は必ずしも一致しなくてもいい?

「荒木さんの場合は牽制で刺されたくないから、重心は一塁側にあるんです。それでもスタートを切れる。みなさん、自身の経験からオリジナルの考えを見出して、それを実践していたと思います。僕の場合、構えの重心は体の真ん中に置き、頭の位置をどこに置くかはピッチャーによって変えていました。けん制がうまい、速いなど、ピッチャーによって違うので......」

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