その周到な準備や洞察力は「神」の領域。鈴木尚広はこうして27.431mを支配した

  • 中島大輔●文 text by Nakajima Daisuke
  • photo by Sankei Visual

鈴木尚広インタビュー(後編)

 2016年まで通算20年間を過ごした巨人での現役時代、鈴木尚広氏が「神の足」と言われた理由は精度の高さにある。ミスが許されない試合終盤に起用され、200盗塁以上での通算盗塁成功率は歴代1位だった(引退当時)。現役最後の2016年には、自身初の盗塁成功率100%を記録した。相手の警戒網をくぐり抜け、なぜ次々と盗塁を成功できたのか。その裏にある周到な準備や洞察力など、「神」の領域に迫る。

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代走での通算盗塁数の日本記録保持者である鈴木尚広氏(写真右)代走での通算盗塁数の日本記録保持者である鈴木尚広氏(写真右)── 鈴木さんが現役時代に「走りにくい」と感じた投手10人のうち9人は右腕で、唯一の左腕が元中日の岩瀬仁紀さんでした。

「岩瀬さんはクイックが速く、牽制があまりにも速かったので。プラス、キャッチャーが谷繁(元信)さんと考えると、自分のなかで『勝負できるのか?』と確信を持てませんでした。

 もし岩瀬さんが先発で、僕が4打席もらって"お試し期間"があれば、話は変わってきます。自分のスピードと、勝負した時の差がわかるので。でも岩瀬さんはクローザーで、僕も代走の切り札として出るから、失敗できない。そう考えると、"とりあえず行ってみよう"という考えにはなりませんでした」

── 1点ビハインドで岩瀬さん、谷繁さんの時に、一塁走者として代走に出たとします。リスクをとって盗塁を仕掛ける必要があるのか。あるいはアウトになるとチャンスがしぼむから、リスクを背負ってはいけないのか。

「常に勝負することがチームにとっていいかと考えると、別のような気がします。自分がチームにいた意味として、当然、盗塁は大前提としてありました。でも、それだけではありません。相手バッテリーにプレッシャーをかけて、バッターに有利な状況をつくることも重要です。そう考えるようになってから、代走として自分のステージがひとつ上がった感覚はありました。『1点もぎ取ってこい』と送り出されるなか、盗塁だけがすべてじゃない。ただ走るだけでなく、主観と客観を持って総合的に判断していました」

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