福留孝介が語る野球人生の危機。その経験から「根尾はショートに固執すべき」 (3ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • photo by Sankei Visual

 安定した守りに加えて、野手陣も大島洋平、平田良介ら30代、高橋周平、京田陽太ら20代半ばの軸ができつつあるなか、根尾昂、石川昂弥、岡林勇希といった高卒2、3年目の才能に溢れた若手がどこまで絡んでいけるのか──そんなドラゴンズの近未来予想図の中で、福留が気にするのは根尾の存在だ。

 かねてからショートへのこだわりを口にしてきた根尾だが、そのポジションには昨年、全試合出場を果たした京田がいる。かつて、ショートとしてプロ入りを果たしながら外野へコンバートされた福留には、ルーキーイヤーの忘れられない記憶が焼きついている。

 1999年4月28日。

 この日のタイガース戦に2番、ショートとして先発した福留は、ホームラン、スリーベース、ツーベースと続けざまに長打を放って、あとはシングルヒットを打てば史上初のルーキーによるサイクルヒットを達成するところまでこぎつけた。福留も「よっしゃ、セーフティバントでもやったろか」と野心をたぎらせた矢先、星野仙一監督が突如、鬼と化す。

「ショート、福留に代えて、久慈(照嘉)」

 当時、星野監督はこう話していた。

「福留の交代? それがどうした。福留は今のままじゃ、ショートでは使えない。これはハッキリ書いてもらって構わんぞ。サイクル? オレに信用される守りができないから、代えざるを得んのだ」

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 その後、福留はサードを経て、プロ4年目には山田久志監督によって外野へコンバートされる。その時のことを彼は「あれは、野球人生におけるピンチだった」とまで言っていた。福留はこう話した。

「僕が内野から外野へ行ったのは、ピンチと言えばピンチでした。でも、いま思えば、チャンスでもあった気がするんです。それは自分で納得するまでやって、自分で腹を括ったから。根尾くんもショートに固執していいし、固執すべきだと思います。この世界でやっていくなかで、自分が自信を持ってやってきたことに対しては固執していい。

 それでも『いや、オレはここじゃダメなんだ』と自分で気づけば、その時に次のことを考えればいいんです。誰かに言われて動くんじゃ、『コンバートされたからダメだった』と自分への逃げ道をつくってしまいますし、そんな言い訳、今までもたくさんの選手からいっぱい聞かされてきました。でも固執して、自分で逃げ道を断って、そこで失敗したとしても、彼はまだ20歳そこらなんでね。自分に自信があるうちは固執すればいいと思いますよ」

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