戦力外報道に「だろうな」。巨人・野上亮磨が語った今季にかける思い (3ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Sankei Visual

「自分としては怖がってはなかったんですけど、左足がやっぱりちょっと変な感じがありました。ステップする位置が少し違っていて、左のお尻への張りも少なかった。だから下半身がそんなに使えていなかったのかなと思います」

 また、野上は走る調整を重視する投手でもあった。アキレス腱を痛めたことで走り込む量が減ったことも、本来の投球には届かなかった要因かもしれない。

「全然走れなかったので、夏場に多めに走ったりしたんですけど、それでも......っていう感じでしたね」

 とはいえ、アキレス腱を切ったことでつながれた縁もある。夏場には、思いがけず前向きになれる出来事もあった。

「ヤクルトの戸田球場に行ったとき、大松さん(尚逸/二軍打撃コーチ)から『アキレス腱切ったんでしょ?』と聞かれて。大松さんも現役時代にアキレス腱を切った経験があって、切った者同士の会話ができたんです。そこで大松さんがポロッと『やった人にしかわからないよね』と言われて。それは勇気づけられましたね」

 リハビリ組で過ごすうちに、日米通算170勝の大投手・岩隈久志とともにする時間が長くなったことも、投手としての初心を取り戻すきっかけになった。

「結局は基本が大事。キャッチボールにしても、やり方や意識の持ち方が大事という話をずっとしていました。単なる肩を温めるだけのキャッチボールじゃなくて、その日の調子、体調のなかでベストのボールを投げる作業はキャッチボールから始まるので」

 野上は今、ストレートのキレ向上に取り組んでいる。それはアキレス腱を断裂する前から問題意識を抱えていたことだった。

「ストレートを打ち返されることが多くなっていて、そのタイミングでアキレス腱を切ったので。また質を上げていかないといけないなと思っています」

 巨人に移籍した2018年から2019年にかけて、ストレートの投球比率は10パーセント以上も落ちていた。頼りにしていた生命線を取り戻さないことには、足が完治しても一軍での活躍は見込めない。

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