戦力外報道に「だろうな」。巨人・野上亮磨が語った今季にかける思い

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Sankei Visual

 2020年の晩秋。巨人がオフに戦力外通告を大量に出す予定だと報じられると、誰がその当事者になるのかを予想するネットニュースを何本か目にした。

 こういうものは選手本人の目に触れてしまうものなのだろうか。恐る恐る本人に尋ねてみると、野上亮磨はあっさりとした口調で「ああ、全然見ていましたね」と答えた。

「だろうな、と思っていましたよ」

 野上はシニカルともとれる笑みを浮かべた。ネットニュースで戦力外通告の有力な候補として名前が挙がっていたのは、野上だったのだ。

2年ぶりの一軍登板に向けて順調に調整を続けている巨人・野上亮磨2年ぶりの一軍登板に向けて順調に調整を続けている巨人・野上亮磨 クビになる覚悟はあったかと問うと、野上は「そうですね。していました」と認めた。「憶測で勝手なことを書きやがって」といった、憤りの感情は湧かなかったという。

「自分が結果を出していないだけなので。そういう世界にいるということは、1年目からわかっていた」

 西武に所属していた2017年、11勝を挙げた野上はFAとなり、巨人に移籍した。長い歴史と全国的な人気のある球団に移籍するといっても、「僕はただ野球をやるだけ」と気負いはなかった。

 だが、結果が出なかった。先発ローテーションの一角として期待された2018年は4勝4敗に終わり、シーズン途中からリリーフに回った。2019年はおもにリリーフとして13試合に登板したが、目立った働きは見せられなかった。そして2020年、野上はプロ入り12年目にして初めて、一軍登板なしに終わった。

 結果的に2021年も巨人と契約を結んだものの、1億5000万円だった野上の推定年俸は80パーセントダウンの3000万まで落ちた。

 巨人が野上と契約を結んだ理由は、故障からの回復途上にあるからだろう。2019年10月20日、宮崎・ひむかスタジアムでのフェニックス・リーグ、韓国・ハンファ戦。日本シリーズに向けた調整登板に臨んだ野上は、投球時にステップする左足を滑らせてしまう。その瞬間、野上は「あぁ、終わった」と思ったという。

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