ダルビッシュも指摘したセ・パのフィジカル差。巨人の罰走に意味ある? (4ページ目)

  • 中島大輔●取材・文 text by Nakajima Daisuke
  • photo by Jiji Photo

 柳田のようにフィジカルで頭抜けたタイプでなくとも、山岡やオリックスの主砲・吉田正尚のように、たとえ大柄でなくともパワーを発揮する選手が近年台頭している。その裏にある一因が、トラックマンやラプソードというテクノロジーの進化だ。選手たちはパフォーマンスを可視化できるようになり、上達の仕方も変わってきた。

 指導にラプソードを駆使する高島氏は、「技術に踏み込めるテクノロジー」と説明する。

「たとえば、打者があるコースを苦手だとします。ラプソードの数値を見れば、打球角度はいいけど打球スピードが遅いからとか、その原因がわかります。

 今はこういう状態になっていて、理想的なスイングができていないのは、胸郭が固いからなのか。そもそも出力が弱すぎるために、ボールを捉えているけど飛ばないだけなのか。理由がわかれば、どんなトレーニングをすればいいのか見えてきます。選手たちはゲームの話から入ったほうがわかりやすいと思うので、トレーナーの自分も分析をできる必要があるんです」

 同様のアプローチ法に力を入れ、成果につなげているのがソフトバンクだ。

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 対して、セ・リーグではいまだに古い価値観が根強い。たとえば昨年話題になったのが、巨人の阿部慎之助二軍監督が強いた"罰走"だ。プロアマ交流戦で早稲田大学に敗れた際、罰として1時間のランニングを指示したが、高島氏は合理性の観点から反対する。

「罰どころか、ただのマイナスです。選手が痩せてしまう罰だから、やめたほうがいい。それによって『なんとかしなきゃ』という意識は生まれるかもしれないけど、勝つ可能性はどんどん減ります」

 負けた罰として走らせ、体重減を招けば出力が低下する。その悪影響は選手本人ばかりか、チームにも及ぶ。野球界で当たり前のように行なわれてきた罰走は、誰も得をしないものだ。

 こうした旧来的な体質を改め、いかに合理的な環境を整えていけるか。それこそ、セ・リーグの巻き返しに必要だと高島氏は見ている。

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