楽天復帰はなぜ今年だったのか。
田中将大が吐露した2つの思い

  • 田口元義●文 text by Taguchi Genki
  • photo by Sankei Visual

 無数のフラッシュが瞬く。8年ぶりにクリムゾンレッドのユニフォームに袖を通した田中将大の背中には「18」が輝いていた。プロ野球界のエースナンバー。自身にとってもキャリアでの成長の証であり、楽天が2014年から「準永久欠番」とする背番号だ。

「『自分が背負っていたからつける』というだけではなくて、結果であったり、姿であったり、そういうところで示せていけたらいいと思います」

8年ぶりに楽天のユニフォームに袖を通す田中将大8年ぶりに楽天のユニフォームに袖を通す田中将大 1月30日の入団会見。「楽天の18番」を完全無欠の背番号へと昇華させた男が、そう決意を新たにした。

 2日前の28日。ニューヨーク・ヤンキースをFA(フリーエージェント)となっていた田中の楽天復帰のニュースは、日本球界のみならず、日本中が沸いた。昨年までの7年間でメジャーリーグ通算78勝。ちょっと古い表現なのだろうが、「現役バリバリのメジャーリーガー」が日本に降り立つ。ましてや、その選手があの田中なのだ。興奮しないわけがない。

 周りが抱く高揚感。それは本人も同じだ。

「また野球ファンのみなさんの前でマウンドに上がって、投げられる。ワクワクが抑えられない状態です」

 どこか吹っ切れたような笑顔で、穏やかに、だがしっかりと言葉を刻む。決断に至るまで、田中は「本当に今まで考えたことがないくらい考えて、悩みに悩み抜いた」と胸中を述べた。

 FAとなった直後は、ヤンキースと再契約をして新たなシーズンに臨みたい----それが本音だった。田中が海を渡ってから掲げ続ける目標。「世界一となってチャンピオンリングを手にする」という、悲願達成を叶えるためである。

 実際、メジャー球団のなかで「7年間をものすごく評価していただき、大きなオファーというのもありました」と、会見の場で田中の口から明かされており、その挑戦権が完全に失われたわけではなかった。

 それでも、楽天を選んだのには大きな理由があった。

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