田中将大と契約しなかったヤンキース。「第2エース」確立をどう考えたか

  • 杉浦大介●文 text by Sugiura Daisuke
  • photo by AP/AFLO

「フリーエージェントになったタイミングでは、ヤンキースと再契約をして、またプレーしたいという気持ちがありました。しかし、かなり早い段階で、代理人を通じての話を聞いている中で、これはもう別々の道を歩んでいかなければいけないんだなと感じましたので、それからはさまざまなことを考えてきました」

 1月29日、東京都内で開催された楽天イーグルスへの入団会見で、田中将大はそう述べた。そこでの正直な言葉からは、大方の予想に反し、田中とヤンキースは早々と"別離"を覚悟していた事実が見えてくる。

ヤンキースから楽天への復帰が決まり、入団会見を開いた田中ヤンキースから楽天への復帰が決まり、入団会見を開いた田中 少々、意外なことのようにも思える。オフ開始当初の時点で、ヤンキースの先発投手陣は不安だらけだったからだ。エースのゲリット・コールに続くのが実績に乏しいジョーダン・モンゴメリー、デイビ・ガルシア、クラーク・シュミット、マイケル・キング、DV規定違反による出場停止処分明けのドミンゴ・ヘルマンといった陣容ではあまりにも心許ない。計算できる存在として、信頼度の高い田中との再契約を望むファンが多かったのも当然だった。

 それにもかかわらず、ヤンキースが別の方向性を選択したポイントはどこにあったのか。特に新型コロナウイルスによるパンデミック下ではさまざまな要素が考えられるが、大きかったのは「給料総額の削減政策」と「第2エースのポテンシャル」のふたつだろう。

 給料総額の件に関してはすでに散々語られており、ここで詳しく繰り返すまでもあるまい。昨季、入場料収入の消失による収入源が影響し、尻に火がついたヤンキースは今オフ、ペイロールを"ぜいたく税"がかからない2億1000万ドル(約219億8000万円)以下に収めることを命題に据えた。そのためスムーズな補強は難しくなってしまった。この"ぜいたく税"の問題がなかったら、田中ともよりフレキシブルな交渉がなされていた可能性は高い。

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