杉谷拳士、増田大輝、周東佑京...秦真司が語る「便利屋」の生きる道 (2ページ目)

  • 田口元義●文 text by Taguchi Genki
  • photo by Koike Yoshihiro

今シーズン、投手を含め多くのポジションをこなした巨人・増田大輝今シーズン、投手を含め多くのポジションをこなした巨人・増田大輝 便利屋----ユーティリティプレーヤーの大前提の条件として、「ピッチャーとキャッチャー以外、どのポジションでも平均以上に守れる」ことが挙げられます。私の認識としては、守備力が高く、足もそれなりに速くて走塁技術のある選手が、そういった立ち位置になるケースが多いように感じています。

 ファンのみなさんをはじめとする一般のイメージとしては、日本ハムの杉谷がまさにユーティリティに適したタイプでしょう。プロ野球全体で言えば、ジャイアンツやソフトバンクのように、複数いるチームが安定した力を示せるように感じています。

 私もジャイアンツのコーチをしていた当時、ユーティリティプレーヤーの存在は非常にありがたかった。レギュラー陣に疲労が溜まり、調子を落とした時期に、彼らがゲーム展開や守備などによって的確に仕事をこなしてくれる。そのことで、チームは戦力を大きく落とすことなく試合運びができるわけです。

 今シーズンのジャイアンツでは若林、田中、増田がそうでした。

 8月6日の阪神戦で増田が緊急登板したことが話題となりましたが、若林、田中も含め3人は器用で身のこなしがいいため、内・外野とも平均以上には守れる。増田あたりは結果を恐れず、思い切りプレーできる選手ですから、ピッチャーに抜擢されたのも頷けます。

 足の速さや守備のうまさ、左ピッチャーにめっぽう強いなど、一芸に秀でた「スペシャリティ」と「ユーティリティ」は混同されがちですが、厳密にいうと違います。

 ソフトバンクの周東を例にするとわかりやすいでしょう。彼は足だけで「侍ジャパン」入りしたほどの選手です。しかし、昨年までは守備範囲は広かったものの、単純なゴロをエラーしたりミスが目立っていたため代走がメインでした。それが今年になると、守備力が向上。最大の課題と言われていたバッティングでも結果を残すようになり、シーズン中盤あたりからレギュラーに定着しました。

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